中編5
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拝み屋の祖母

昨日、投稿させて頂いたものです。

私の住む町には、全国的に有名な霊場があります。昭和30年代までは、たくさんの拝み屋がいたそうで私の祖母も、その一人でした。

祖母は、祖父と結婚する事となり、拝み屋を辞めましたが、辞めた後も祖母を頼って何人かの人が毎日、来ていました。

私の母と父は、親戚同士でしたが、結婚することになり霊感の強い母を祖母は、実の娘のように可愛がりました。

幼い頃の記憶ですが覚えているのは、私は4~5才くらいでした。

私の家には、祖母を頼って毎日、何人かの人が相談に来ていたのを覚えています。その中に毎日来る中年のおばちゃんがいました。

おばちゃんが来ると祖母は、いつも仏間におばちゃんと入って、そして私に「ええか!ウチらホトケさんに手え合わしてくるから中を覗いたらアカンで!」と私に言いました。

でも、幼い私には、意味が分からず祖母の後を毎回、着いて行こうとしました。

その度に、いつもは優しい祖母が「着いてくんな!絹ちゃん!(母の名前)絹ちゃん!と母を呼んで連れ戻されました。

幼いながら私は、中で何してるんだろうと興味津々だったのを覚えています。

そんな事が何週間も続いたのですが、そのうちに幼い私は興味を失い、おばちゃんが来ても仏間を覗こうとはしなくなりました。

そんなある日の事、いつものように、おばちゃんがうちに来て祖母と仏間に入っていきました。

私は、遊び相手もおらず、その日は暇を持て余していました。

母は、来客と話をしてるし、テレビを見ても面白いのやってないし・・・

いつしか私は、家の中をうろうろしていました。

そして気付くと仏間の前にいました。

「中で何やってるんやろ?」私は、そう思いました。

中を覗こうかな?幼い私は、どうしようか迷いました。(覗いたら、ばあちゃんに叱られるし・・・)でも幼い私は誘惑には勝てませんでした。

ウチの仏間には、先祖の仏壇と、お不動さんと名前を知らない仏像が何体か奉っています。

私は、そっと開けたつもりですが、幼かった私は、力の加減を間違えて襖を10センチくらい開けてしまいました。

中を覗くと祖母が仏像の前に座っていて念仏を唱えているのが見えました。

その後ろに、おばちゃんが座って手を合わせています。

でも、おばちゃんの頭の上には、いっぱい綿菓子が乗ってるのが見えました。

綿菓子は、おばちゃんの頭の上で雲のようになっていました。

おばちゃんの頭の上には、まるで綿菓子のようなキノコ雲のような煙りでいっぱいでした。

中の光景を見て思わず私は、「あっ!」と声をあげてしまいました。

すると祖母は経文を唱えるのをやめて、祖母とおばちゃんは、いっせいに私の方を見ました。

その時、私が見たのは、おばちゃんの頭の上の綿菓子雲も私の方に向かって半回転しました。

その綿菓子雲の中心に何か見えました。

それは、もの凄い形相の白い顔をした若い女でした。

驚いた私は「あ・わわ・わ・わ・わ」と悲鳴にならない声を上げて腰を抜かしました。

その綿菓子女は私と目が合うと、もの凄い速さで、おばちゃんの口や鼻に吸い込まれるように消えてなくなりました。

驚いて腰を抜かした私に祖母は、怒鳴りつけました。

「あれほど覗くな言うたやろ。あんたのせいで今までの事が全てだいなしや!絹ちゃん!絹ちゃん!(母を呼んで)あんたなんでこの子を見とかんかったん?

」祖母は母を叱りましたが、やがて一言

「もうアカン!」

と言ったのを覚えています。

その日は、夜まで祖母と母にきつい叱られて晩御飯抜きだったのを覚えています。

そして、翌日からおばちゃんは二度と家に来ることはありませんでした。

それから私は、高校に上がるまで仏間に入ることも近付くことも許されませんでした。

私の中で祖母の言った「もう、アカン!」の一言がひっかかっていましたが聞いては、いけない事のように思えたので、聞けませんでした。

それから月日がたって私も成人になり、祖母は10年前に他界しました。

ある日の夕方の事なのですが、母は昼に婦人会に行って豪華な仕出し弁当を食べて、お酒まで飲んできたのか、えらく上機嫌でした。

普段、無口であまり話さない母ですが、上機嫌な母は、昼間あった事を私に話だしました。

私は、適当に返事をしていましたが、ふと昔あったあの事を思いだし、母に尋ねてみました。

母は、しばらく考えて「あぁ、佐原の奥さんの事か」

「佐原の奥さん?」

母は私に 「そやな、おばあちゃんが死んでだいぶたつし、あんたも大人になったから話してもいいか!」母は懐かしそうに話だしました。

「佐原の奥さんなぁ、あの人は2号さんやってん!不倫相手にはなぁ奥さんと娘さんが一人おったんやけど奥さん自殺しはってなぁ、それで後家さんになりはったんよ、でも娘さんがなぁ、奥さんの事をえらく憎みはってなぁ、呪いの言葉吐いてお母さんの後追って自殺したんよ、それからは夜になると自殺した娘さんが毎晩、佐原の奥さんの前に現れて呪いの言葉を浴びせかけるんよ、奥さんはウチのおばあちゃん頼って毎日、来てはったんや」

私は母に祖母の言った「もう アカン」の意味を尋ねました。

「自殺した娘さんなぁ、すごく怨んでたから、最初おばあちゃんの前には姿、現さんかったんよ説得してやっと姿を現すようになったんやけどアンタに姿を見られたから、もう二度とおばあちゃんの前には姿を現わさん、ゆっくり時間を かけて成仏させるつもりやったって言うてたわ」

私は、その後おばちゃんはどうなったのか尋ねました。

「奥さん、あの後すぐに離婚しはってなぁ、おばあちゃんの紹介で福井のお寺の尼さんなりはった。前妻さんと娘さんは自分が殺したもんや言うてなぁ、それから旦那さんは、またすぐに若い嫁はんもらったけど心臓マヒでポックリ逝きはったわ。」

そして母は最後に

「因果応報!罰があたったんよ」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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