中編3
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図書室

私は小さい頃から本が好きだった。

ずっと本に関わり続け、今でも本関連の仕事をしている。

この投稿では、小学校時代に私が体験した事をお話させていただこうと思う。

私の小学校では、図書室は休み時間も放課後でも使用することができた。週に何度かは、図書委員により放課後でも貸し出しを行っていた。

私は専ら本を借りて図書室を利用しており、小学四年に進級して借りられる本の数が増えたことに、喜んだりしたものだ。

その、小学四年生のときの話。

友達との遊ぶ約束も無い日となった私は、六月半ばの梅雨空を感じながら、窓際で読書をしていた。

その日は貸し出し日ではなく、本を読むには図書室に滞在しなければならなかった。

いつもは長居しない図書室には私しかおらず、湿気と古い蔵書の匂いが混じり合い、外は薄暗く雨が降っており、年季の入った本棚・机・椅子も相まってとても寂しい雰囲気を演出していた。

このような状況ではあったが、廊下や教室では児童の走り回る音や声がしていることもあり、怖いという感情は起きなかった。

むしろ「贅沢な環境の中で本を読めてる!」と嬉しく思っていた。

気がつくと文字を追えないほど暗くなっていた。

そこまで本に集中していたのか・・・壁の時計に目を移してみたものの、やけに暗く時間を読み取ることはできなかった。

外はまだ雨が降っている。児童の声はしない。もう、誰もいない?先生は?

そうだ、先生は。図書室を閉める時間に先生が来るはずだ。だが、先生は来ない。こんなに暗いのに。

そもそもなぜこれ程まで暗いのだ。私は図書室の蛍光灯を見上げた。

明かりは、点いていた。全ての蛍光灯が恐ろしく弱い明かりを放っていた。

いや、明かりとしての役割は果たしていなかった。蛍光塗料が暗がりで放つ程度の明るさしかなく、暗さを際立たせる道具にしかなっていなかった。

私は一気に恐怖に支配された。

背中を、なるべく椅子の背もたれから出さないように変な体制を取り、固まった。自分の見えない範囲が怖かった。

ここから出たい。けど動きたくない。この変な空間は何なんだ。

外はあるのか。外も、この異様な暗さではないのか。もしそうだったとしたら私は。どうにかなってしまいそうだった。

どのくらいの時間が経ったのか、分からない。

これ以上目が慣れることは無かった。

私は立ち上がり、本棚にぴったり背を付け恐る恐る扉へ向かった。

なるべく蛍光灯を見ないように、俯きながら歩く。

一歩一歩進むうちに、違和感を感じた。ここは図書室であるのに、ひどく私は知っているのだった。

私の目に入る本は全て、これまでに読んだことのある本なのだった。

小学校の図書室とは言え、卒業までに読み切れない量の蔵書がある。それらが全部私が読んだことのある本になっていた。

ゆえに、同じ本が何冊も出現するのだ。

もう限界だった。私は悲鳴をあげる。

ここまでが記憶である。これら一連の記憶はブロックのようになっており、前後に何があったかはっきりしない。

夢ではないと思っている。図書室に似た空間に入ってしまった当日、私は震えながらある先生にこの出来事を話したらしい。

このことが起きた後も、な ぜか私は変わらず図書室に行っている。

今になって思い返すと、とても怖ろしいのに・・・

怖い話投稿:ホラーテラー さかなしさん  

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