【始まりの場所】
激痛で目が覚めると俺は暗闇の中にいた。
意識が朦朧としている中、一人の男が何か言いながら俺の腹を刃物で刺した。
誰かの名前のような感じだった。
その名前に聞き覚えはなく、誰かに恨まれるようなことをした記憶もない。
そしてまったく見覚えの無いその男は去っていった。
水がはってあるここはおそらく風呂場だろう。
【風呂場】
いったいどうゆうことなのか…。
なぜこんな状況になったのかを思い出そうとしても思い出せない。
ここに来る前までの記憶が一切無いんだ。
腹に刺さったものを抜こうにも全身を紐で縛られており、抜くことが出来ない。
暗闇に目が慣れてきて腹に刺さったものがくだものナイフだとわかった。
とりあえずここから出なければ…。
だが、縄で縛られている為にうまく動けない。
じたばたしながら水から出るときに運良く水の勢いでナイフが抜け、浴槽の中に沈んでいった。
【部屋へと続く通路】
床を這いながら移動した。真っ暗闇の中に床を這いつくばって移動する音以外に音がする。
音のする方向ではないほうに逃げなければいけないが、なぜか体は音のする方向に向かってしまっている。
その先にある部屋からは光りがもれている。
こんな状況で逃げずに男が気になって仕方がない。
男はそこにいるのだろうか…。
俺は男に会ってどうするつもりなんだろうか。逃げなければいけない。だが、体は光と音の方へ向かった。部屋の中でテレビだけがついている。
【部屋の中】
光と音の正体はテレビだったのだ。そっと辺りを見回してみるが男の気配はなかった。
テレビの光で部屋を見ているとなぜ逃げなかったのか自分の気持ちに気付いた。
俺は男を殺さなくてはいけない。
ここに来るまでの記憶はないが、俺はきっとこの男を殺すためにここに来て、男の殺害に失敗したうえに捕まってしまった。
おそらくこの殺意はそのためだろう。
玄関の扉の音はまだ聞いていない。
きっと男はまだこの部屋の中にいる。
殺すのだ!あの男を殺すのだ!
男の気配を探るためにテレビを消す。
テレビの光に照らされたリモコンを見つけ、指先で探りながらいろんなボタンを押す。
カチカチやるうちにテレビが消えた。
また暗闇の世界に戻ってきた。
テレビの音がなくなり静かになると押し入れの中から人の息づかいが聞こえた。
間違いない。男は押し入れの中にいる。
息づがい以外にカチカチという音がする。
何かのボタンを押しているかのようだ。
不気味なカチカチする音が俺を冷静にさせた。頭の中で風呂場にあるナイフを思い出す。
最初は逃げることで必死だったが今は冷静に考えれる。
なぜ、紐をナイフで切らなかったのか…。今思うと情けない。
ナイフで紐を切り、動けるようになったら男を切り刻むんだ。
【再び風呂場へ】
部屋を後に風呂場に向かった。
男に気付かれないように静かに移動した。
風呂場に着くと同時に「バン!」と押し入れの襖が開く音と同時に足跡が聞こえる。
走る音は早く、俺はナイフを手にする前に男は風呂場に来てしまった。
素直に逃げていればよかったと後悔した。
男はコップに入れた水を俺にかけると、口に入っていた水を俺にかけた。
傷口にしみる。ただの水ではないようだ。
そして男は「私の勝ち」と同じ事を三回も繰り返して言った。
何度も言わなくてもこの状況を見れば誰もが俺の負けだと思うだろう。
そしてまた意識が遠退いていく。俺は死ぬんだろう…。
「やべぇ!浴槽の中から動いてた!テレビも消えてたしまじでやべぇ!早くこのぬいぐるみを燃やさないと。」
俺は意識が途切れるとともに聞いていたが、男が何を言ってるのか理解は出来なかった。
そして俺は死んだ。
カチカチ、カチカチ。
[一人鬼ごっこまじやべぇ!]
カチカチ、カチカチ…。
[ぬいぐるみ動いてました!]
カチカチ、カチカチ…。
[今からぬいぐるみ燃やします。]
カチカチ、カチカチ…。
カチカチ、カチカチ…。
[こんなオチですいません。読んでくれてありがとうございました。]
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話