私のじいちゃんの生前の話です。
じいちゃんは酒が大好きでしたがアルコールが入ると……まぁ、いわゆる酒乱ってやつで、おちょこで僅かな量を呑んだだけでもドンチャン騒いで迷惑をかける人でした。
これは、心霊体験でなく肝を冷やした話です。
でも、私は怖かったので敢えて投下します。
小学校3年の時です。
ある日、泥だらけのじいちゃんが帰ってきました。
汗だくでどことなく落ち着きが無く
「どうしたの」
と、声を掛けても
「ん、なんでもねぇ…」
なんて目を合わせようともしませんでした。
植木の刈り込みなんかをしょっちゅう行う人だったので、泥まみれでも私は別に気にもせず冷蔵庫のコーラを持ち去るのを見てました。
その日は、小学校が休みだったので撮り溜めしてたビデオでも見ようと呑気に構えてたのですが私の休日プランは3分もしないで崩れ去ったのです。
「おう、どう落とし前つけんだコラ」
「ぶつけといて逃げるとかバッカじゃねーの、フツーに弁償っしょ」
チャイムも鳴らさず玄関で怒鳴り込んでくるやつがいる。
外はねゆるふわ系金髪のヤンキーと真っ白な髪をツインテールにしたヤマンバメイクなギャルの2人組。
家の前に止めてある小汚い白くて小さい車には長い擦った傷。
面識のない異様な二人の来襲に震えるばあちゃん。
1、(昼から友達の勧めで呑んだ)じいちゃんが歩道に止まってた彼らの車が邪魔なもんで傘でつついてたのを持ち主の2人目撃。
2、汚れた、車に傷ついた、金払え
要約するとこんなもんでしょうか。
ばあちゃんは、胸倉を掴まれコメツキバッタみたいに床に頭をついて謝っていました。
ですが、男に髪を掴まれ揺さぶられては殴られ、女は煙草をふかしながら顔に煙を吹き掛けたりしていました。
どう考えても話なんか聞く連中じゃありません。
それでも、うちの亭主がすみませんごめんなさいと泣いて謝り、このまま嬲り殺されるんじゃないかと子供ながらに本気で思いました。
影から様子を見ていただけでも私は悔しくて泣きそうでした。
「じ、じいちゃん…!」
頼れるのは男のじいちゃんだと思い、小声で家中を捜索。見つからない。
結局、私は勝手口から裸足で飛び出して近所に住む強面のおじさんに泣きながら救助を要請。
あまりの泣きっぷりに慌てて来てくれたみたいで、ばあちゃんはそれ以上酷いことにもならず、我が家に示談金が吹っかけられることもなくすみました。
ちなみにじいちゃんは何処にいたかと思えば、自分の妻に謝らせておきながらトイレでコーラ飲んでました。
善良な市民が殺意を覚えるのはあんな時だと思います。
じいちゃんは自然死ですのでご安心を…。
怖い話投稿:ホラーテラー Ms.少年さん
作者怖話