短編2
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拝み屋

赤い灯りの中、階段を昇る足音…客が来たようだ。

交渉は表にいるおばちゃんがしてくれる。 

客は初老の男性。

髪はロマンスグレー。きれいに整えられた口髭。目鼻立ちがはっきりした、いい男だ。

男は高そうなコートを脱いだ。

衣紋掛けを差し出す。 

客とはいえ、過剰なサービスはしない。

ここは、サービスの良さを売りにはしていない。

男は衣紋掛けにコートを掛けた。

おばちゃんがお茶を持って来て、ここのルールを説明する。

客と私の安全の為だ。

おばちゃんは私にある物を手渡す。

これから客の身におこる事から身を守る御守りみたいな物だ。

客が身につける事によって私も守られるのだ。

幼少より強力な霊力を持つ私も、このちっぽけな御守りを頼っている。

今まで、このちっぽけな御守りの力を信じず、廃業した者は数知れない。死んだ者も少なくない。

少し私の事を語りたい。

私は幼少より見えざる者を見る能力があった。

大人達は私を気味悪がり、離れていった。 

私は愛を知らず育っていった。 

小学生の頃は私の力は羨望の的だった。

私は、その力を大いに自慢した。 

よく友達と自転車で、近所の廃屋や森などに、肝試しに行ったものだ。

勿論、いつも私が主役だった。

しかし中学に上がると事態が一変した。 私の霊力を疑う者が現れた。 

誓って言うが私の霊力は本物だ。

私のグループから一人、また一人とアンチ霊派へと去って行った。 

気がつけば、私は一人になっていた…。 

暗い中学時代を過ごし、高校は誰も知らない所を選んだ。 

高校に入学すると力の事は隠した。 

そして私は所謂、高校デビューを果たした。 荒れた高校時代だった。 暴走族にも入った。 族仲間を通じ、ヤクザとも繋がりができた。 私はこのまま、どっぷりと悪の道に染まって行くんだなぁ、そう思っていた。 

悪い事は大抵の事はした。 殺人以外と言った方が早い。 

ヤクザなんて信用しない、利用するだけと思った私に、転機が訪れた。 

そう、この仕事を勧めてくれた、真栄里大主との出会いだ。 

彼は私の力を見抜き、仕事を回してくれた。 

幾つもの仕事をソツなくこなした。 

そして、彼の信用得て現在の場所で、この家業を生業とするに至った。 

男は私の業の前に恍惚の表情を浮かべる。

最期の時は近い。

さあ観音様を拝むのだ!

ここは大阪飛田新地、今日も私は客に観音様を拝ませる。

怖い話投稿:ホラーテラー 鯑天井さん  

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