短編2
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拝み屋 華国の男①

私は大阪飛田新地で春を売る女。 

名前は…

そうね、サイコとでも言っておこうか。

最近この界隈にも華人の姿が目につく。 

華人は必ずと言っていい程、憑いている。 

そう私は見えざる者を見る目を持っている。

さあ今夜の客は春を買いに来る客か、それとも…

赤い灯りの中、階段を昇る足音が…

交渉は表のおばちゃんがしてくれる。

足音は二人分。

今夜の客は拝み屋の方のようだ。 

私の部屋の戸を乱暴に開ける。

やはりそうだ、真栄里大主と客だ。 

「サイコ、客を連れて来たぜ」

「どっちのだい?」一応尋ねた。

「あっちだ」

「話しを聞こうか」

客は華人のようだ。日本語は話せないので、真栄里が話す。

「一週間、こいつを預かって欲しい」

「はあ?」

この頭の禿げあがった、出っ歯のおっさんを預かれだ!?

見たところ何も憑いてる様子は無い。

「これは、あっちの客じゃないだろ 私を抱きたいなら表でおばちゃんと交渉してきな」

「まあ待てよ もうすぐ12時だ 面白い事が起こるぜ」

私はタバコをバックから取り出した。

華人はすかさずライターを差し出した。

気はきくようだが、嫌悪感が湧くタイプだ。 

飛田にいれば嫌な客に抱かれなんて毎日の事だ。

しかし、この華人には触れられるどころか、タバコに火を点けられるのも嫌だ。

私は自慢のシルバーのジッポーで火を点けた。 

タバコを半分くらい吸ったところで異変が起きた。

空気が部屋の真ん中に渦を巻いて集まっている。 

いや、華人に向かっているようだ。

華人は数珠を出し、何かブツブツ唱えだした。

華国のお経なのか?  私には解らない。

華人の顔がみるみる真っ赤になってゆく。

何も見えないが危険は感じる!

私は胸から御守りを取り出した! 

違う! これはおばちゃんから支給される春用の御守り、つまりコンドームだ。

バックから護符を取り出す。 

便利な時代になったもんだ。拝み屋専門店に行くと、まるでプリクラのような護符シールが売っている。 

店はどこにあるかは聞かないでくれ、知られると拝みの商売あがったりだからな。 

シールを一枚剥がし、華人の額に貼ろうとした瞬間、ゴムボールが間にあるよに跳ね返された。 

パァァン!! 赤いセロハンで囲った豆電球が割れた。 

私の商売道具の煎餅布団に破片が散らばる。

私はぶち切れで華人を殴り倒した。

どうやら物理的攻撃は効くようだ。

   つづく

怖い話投稿:ホラーテラー 鯑天井さん  

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