中編3
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お母さんの訪問

まず、最初に断って置かなければならないのはこの話は別段怖い話ではないということです。

しかし5年経った今でも不思議に思う出来事であるため、今回投稿するに至りました。

また、思い出しながら書き進めているため文章が読みにくいかもしれません。

できるだけ気をつけますが、ご了承をお願いします。

5年前、私は東京で一人暮らしをしながら専門学校に通っていました。

実家は東京から2時間程度はなれたI県にあります。

その頃はもうその生活にも慣れて学校の勉強はもちろん、友達と遊んだりバイトに明け暮れたりして割と忙しかったのを覚えています。

そんなある日の夕方、母がいきなり訪ねてきました。

今まで、何度か部屋にやってきたことはありましたがいつもは事前に連絡をくれていたので

何かあったのだろうかと母にコーヒーを淹れながらちょっと心配をしました。

「珍しいね急にくるなんて。」

私が問いかけると母はにっこり笑って

「思い立って。ビックリした?」

特に変わった様子もなく答えました。

それから他愛のない話をしました。

話の内容はうっすらとしか覚えていないのですが、いとこのTが結婚をする話が主だったと思います。

1時間程度のんびり話をし、満足したのか母は「帰る」と言い出しました。

「暗くなってきたしどうせなら泊まっていけば?お父さん今出張中でしょ?」

私は引き止めたのですが「どうしても外せない用事があるから」と言うので

それならせめて駅まで送って行くと申し出たのですが

「ありがとう。でも、ここまで来たんだから大丈夫よ。私を送っていったらあんたの帰りが心配でしょ。」

やんわりと断られました。

母が帰るのを見送った後、少しテレビを見て「さて片付けでもするか!」と思い立った頃、

私のケータイが鳴りました。

着信を見てみると実家の電話番号からです。

”もしかしたら出張中の父が早く帰ってきて母の心配でもしてるのかもしれない”

そう思った私は慌てて通話ボタンを押しました。

『あ、N(私の名前)元気にしてる?』

そしてそこから聞こえた声に呆然としました。

なぜなら、電話口から聞こえた声が紛れもない母の声だったからです。

しかし、そんなハズはないのです。

今日母は、私の部屋に来ていたのですから。

東京の私の部屋から実家へはどんなに急いでも2時間弱はかかります。

母を見送った後に私がテレビに気を取られていたのはせいぜい30分程度だったハズです。

「お母さん?どうしたの?まさかもう着いたとか(笑)?」

喉がカラカラになりましたが、なんとか言葉を出しました。

『?何言ってるの??』

母はわけのわからないと言った風に答えました。

「さっき帰ったばかりじゃん。今ケータイでかけてるの?」

もしかしたら、実家の電話番号と母の携帯電話の登録を逆にしてしまっていたのかもしれない。

そんな淡い気持ちを込めて質問しました。

結果、そんなことはなく、母は今日は一日中実家に居たとのこと。

私の声がこわばるのを感じたのか、母が電話越しにしきりに心配をしましたが、なんとか取り繕い電話を切りました。

”ホームシックになって白昼夢でも見ていたのだろうか?”

だんだん自分でも今日会った母は幻なんじゃないかと思い始めました。

が、テーブルの上を見てその考えを振り払いました。

なぜなら、そこには私の愛用のマグカップの他に、もう一客、コーヒーカップが並んでいたからです。

一時期は母の身に何かあるのでは…?と不安になりましたが時間と共にその不安は解消されていき

私は専門学校を卒業した後に、I県の企業に就職をし、また実家に戻ってきました。

あれから5年の月日が流れましたが、母は今も元気です。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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