中編3
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誰かいる

最近のお話です。

私は警備会社に勤務して数十年になります。

高層ビルやデパートの夜間警備など日常の勤務で行っています。

ですから、暑い季節になると心霊話や都市伝説が

必ず付きまとってくるんです。

あのデパートには出るだの、あのビルはやばいだの、この手の話が社内では腐るほどありましたけど、私にはまったく無縁でした。

私自身、興味がないというのもありますが、霊感があるわけでもなく、とにかく関心がなかったのです。

そんな私が奇妙な体験をしたのは、都内某所にある十階建ての雑居ビルです。

このビルのセキュリティーシステムが作動し、侵入者アラームが鳴ったんです。

出動前に、電話で連絡を入れてみました。

どうせ残業で寝泊りしている社員の誤作動だろうと思っていたのですが、

誰も電話に出ません。

「侵入者?」

一応、私を含めた3名はすぐに出動しました。

誰もが心中は「機械の誤作動」だと思っているようでした。緊張感がまるでなく、2人も陽気なものでした。

ビルに到着した我々は、スペアのキーカードで内部へ入りました。

入り口フロア正面にはエレベーターが一機。

その横には内部階段と非常用の外部階段の入り口があるだけです。

侵入者がいるとすれば、

必ずこのフロアを通らねばならないわけです。

我々は、監視カメラを戻して再生してみました。

休日なだけに、昨日の夜から誰もこのフロアを通っていませんでした。

結論は、中に人が残っている。でした。

セキュリティーシステムが作動したのは八階で、

エレベーターも八階にとまっていました。カメラを再び作動させ、我々は

エレベーターへ向かいました。

「八階だな。行こう」

「あ、いや誰か降りてきますよ!?」

△を押す前に、八階に止まってたエレベーターが降りてきたんです。

5・・3・・・2・・1。

ウィーン・・・。

ドアが開きました。

「あれ?」

誰も乗っていませんでした。首を傾げつつも我々3名はエレベーターに乗りました。

八階到着。

ところが、八階フロアの扉が開いてません。

「機械の故障だね」

「そうだな」

そう思って、工具を取りに戻ろうとしたら、誰も何もしてないのにエレベーターが一階へ降りてしまいました。

「あれ?誰か来たのか」

「今日は間が悪いな」

苦笑しながら待っていると、エレベーターはどこにも止まらず八階まで来ました。

扉が開きました。

「ええ?」

そう、誰も乗っていなかったのです。

私は二人のどちらかが悪戯していると思ったのですが、二人とも表情が強張っているのを見てそれは無いと思いました。

で、考えられるのはエレベータも故障しているのかなと。

とりあえず、三人で一階フロアまで降りました。

車から工具を持って戻ると、エレベーターはふたたび八階に。

「完全に壊れてるな」

もう疑う余地もありませんでした。

「念のため、フロアのビデオ見てみますか?」

「車はビルの前に停めてあるし、その合間を抜けて浸入は考えられないだろ」

セキュリティードアが開いた様子もありませんでした。

しかし、二人はふたたびビデオを取り出して巻き戻し、再生しました。

何も映っていません。

「ほら、早くビデオ戻せよ。行くぞー」

と私が言った時。

車へ戻っていく我々三人が映りました。

その後に女が続き・・・。

「ひぃっ!」

みんな凍りつきました。

女はビデオの前で立ち止まりました。

そしてふり返り・・・。

ニタァと笑いました。

そのとき、八階に止まっていたエレベーターが降りてきました。

「うわ、来るぞ・・・!」

我々は工具さえも放りっぱなしで事務所へ逃げ帰りました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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