短編2
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回転男

ある日のこと、近所の公園のベンチに腰掛け読書に耽っていた。

すると、小さなビニール製のボールが私の足元に転がってきた。

視線を上げると、小さな女の子が私に向かって走って来るのが見える。

きっと、このボールの持ち主だろう。私はボールを手に取り女の子に手渡す。

『ありがとう』

『いやいや。どう致しまして』

女の子は元気に走って遊びに戻り、私は再び本に目を落とした。

おや?

女の子は行ったと思っていたが、落とした視線の先に女の子のものとおぼしき足元が見える。

再び視線を上げると、あの女の子が、まだ私の目の前に立ってた。

『どうしたの?』

『あの人…なんでまわっているの〜?』

女の子は私の頭上を指差して訊ねた。

『…え!?』

思わず指差す方を向こうと体を起こしたとき、女の子の後方から聞こえた女性の声が、私を止めた。

『どうも、すみません。邪魔しちゃダメでしょ。あっちで遊びましょう』

『いえいえ…大丈夫ですよ。お気になさらずに…』

母親であろう。

その様な簡単なやりとりのあと、女の子の手を引いて行き、私はゆっくりと読書の続きを楽しんだ。

小一時間もした頃、ふと公園を見渡すと誰も居なくなっている。

もう日も傾きかける頃だし、私も帰ろうと立ち上がった。

ゴスッ!!

何かが頭頂部に当たり、直後、擦るように顔面まで落ちてきて視界一杯に広がる。

匂いで、それが何なのかすぐに分かった。

靴下である。

だが、それだけではない。確実に履いているのが分かる…。足裏の肉の感触が顔を撫でていたから…。

おそらく、触れていたのは一瞬だろうが、反射行動で顔を避けながらも、人間の足であることには気が付いた。

ベンチから一、二歩離れ、反転し向き直ると、目の前の空中を、紺色のスラックスの裾から出た、黒い靴下を履いている足がくるくると回っている。

見てはならない。

気持ちでは分かっていても、視線を上げてしまうものか…。

だらんとした手足、虚ろな目、飛び出した舌…。

どう見ても首吊りの自殺体。

私は、その場にヘタりこんだ。

ロープは見えない。

生気の無い中年男性が空中に浮いた状態で回っている。

やがて回転が止まり始め、私に正面を向けて完全に停止した。

そして、上を向いた眼球がグルンと私に向き、舌を出したままの口が口角をゆっくりと上げ、ニヤッと笑った瞬間に私は気を失ってしまった。

犬の散歩のお爺さんに起こされるまで、多分10〜20分くらいだろうが、気が付いたときには、もう男の姿は消えていた。

あの男が何だったのかは、分からない。

だが、今でも一人で居るときに下を向くと、時々、あの匂いを感じることがある。

当然、匂いがしなくなるまで、顔を上げることは、絶対にない。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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靴下のにおいを嗅がせてくるなんてイヤだぁw

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