短編2
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ベルフェゴール

トイレの扉を開けると便座に悪魔が座っていた。

「お前の願いを叶えてやろう」

こう言うので、僕は願いを言った。

「早く大人になりたい」

その願い叶えてやろう。そう言いながら悪魔は消えていき、僕は気を失った。

気がつくと朝だった。いつベッドに入ったのか思い出せない。何か変わった事があった様な気もするが…。

しかし、そんな事がどうでもいいくらい眠い。とても眠い。

病気かもしれない。今日は学校を休むとお母さんに言った。

気がつくと、もう朝だった。しかし沢山眠った筈なのにまだ眠い。まだ病気が治っていないのだろう。今日も休む事にして、布団に潜る。

気がつくと、一週間経っていた。

しかしまだまだ眠い。頭の中に霧が掛かっている。きっと酷い病気なのだ。それを治す為には眠るしか無いのだ。

お母さんが学校に行けと言うので、聞きたくなくて扉に鍵を掛けた。布団に潜る。

気がついたら、一ヶ月経っていた。が、どうでもいい。眠い。

幸い、夜は多少起きていられる事に気付いた。勉強はその時にでもしよう。

母親が扉の外で何か言っている様だ。先生が来たとか言っている。

僕は病気と戦っているのだ。その上勉強しようともしている。口を出される筋合いは無い。

確か、その様な内容の事を怒鳴った様な気がする。何故怒鳴ったりしたのだろう。

まあとにかく、眠いので寝る。

気がついたら、僕の学年の卒業式が終わっていたらしい。

これで何の気兼ねもする必要はなくなった。

この事は…あー、何て言ったっけ、あの扉の外の人…そう、親が教えてくれた。何故だか色々と世話をしてくれるので、大変助かっている。

何しろ、僕は大変な病気と戦っているし、その上実社会の色々な問題とも戦わなければならない。

よし今日は朝から勉強しよう。パソコンを点ける。とりあえずオナニーでもして、気分転換だ。何せ頭に霧が掛かっている様で、集中できない。

なに、時間はまだあるのだ。

気がつくと、大人になっていた。

ふと、頭に掛かっていた霧が晴れる。

あの、学校を休み始めた日から十年経っていた。

私は一体、今までの人生で、何をしてきたのだろう。

時々、自分が十年間、悪魔に取り付かれていたのではないか、とさえ考える。

しかし、紛れもない十年間の怠惰の記憶がそこにある。

いる筈のない悪魔のせいにさえしようとする自分の弱さに閉口する。

怖い話投稿:ホラーテラー 二股おろちさん  

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