短編2
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叔父と廃屋 1

K県I町に大きな廃屋があります。

比較的交通量の多い海沿いの道路に面したその廃屋は“お屋敷”という表現が似合う建物で、道路に沿うように巡らされた土塀と立派な薬医門があり、その敷地の広さに至っては手入れされないままで残っているため、鬱蒼とした森のようになっています。

薬医門は朽ち果ててしまい、今では無惨な姿で崩れ落ちた漆喰の土塀と相俟って不気味さを醸し出しています。

昼間でもなぜかその辺りだけはどんよりと暗く、闇が濃くなる夜は一人でその道を通ることすら怖いと感じてしまいます。

その屋敷にまつわる不気味な噂や怪談話のせいでよけいにそう感じてしまったのかも知れませんが……

これは、そのお屋敷の調査を依頼された叔父の日記をもとにした話です。

真夏のある日、初老の女性が訪ねて来た。

背筋をしゃんと伸ばし、洒落た身なりの柔和な笑みが印象的な人だった。

「ある建物の調査をお願いしたいのです。そして、解体工事ができるようであれば解体してもらえませんか?」

どこへ行っても場所を伝えると拒否されたと疲れたような、半分諦めているような顔をしていた。

正直自分も断わりたかったが、とりあえず調査だけでもしてみる形となった。

朽ち果てた薬医門と崩れ落ちた漆喰の土塀

昼間でも陰気なこの場所に立ち入る事になるとは

私がこの場所を訪れたのは二度目になる。

一度目は中学生の頃、幽霊をみた。あそこはヤバイだのと言った話を聞いた仲間に強引に肝試しに付き合わされたからだった。

そう、あの日も今日のようにまとわりつくような風が吹いていた。

ねっとりと絡みつくように

お調子者のSとおとなしいY野球が得意なDそれともう一人……

その一人を思い出そうとした途端に頭がぼんやりとして、靄がかかったようになる。

崩れ落ちた大きな倉

枯れ井戸

どぶ臭い池

ああ、一体何をしていたのだろう

私は気がつけば薬医門の前で立ち尽くしていた。

夕陽に照らされているせいなのか、崩れた土塀がいやに赤く感じる。

明日、もう一度いかなければ……

忘れた記憶と

もう一人を見つけ出すために

次の日、叔父は

『く ら い しろう』という書き置きを残し行方不明になりました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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