ある漁師町に新鮮な海の幸をふんだんに使った夕食がウリの民宿がありました。
料金は前払いでお一人様3万円。今日も2人組の男性客が一組、その民宿に足を運びました。
ただその日は不運にも天候が悪く、その民宿に魚介類を納品している漁師さん達が漁に出ることが出来ませんでした。
自慢の海の幸を振る舞うことが出来ず気を病んだ女将は、従業員のひとりを呼びつけました。
「今日のお客様にいつも通りの値段をお支払い頂くのは流石に悪いわねぇ…今日は半額でいいわ。あなたちょっと客室に行って、3万円返してきてくれないかしら」
そう言って女将は、従業員に一万円札を3枚手渡しました。
ところがこの従業員、客室に向かう途中に魔が差してしまいました。受け取った3万円のうち1万円を自分の懐に入れ、残り2万円を2人組の男性客に返したのです。
結局、男性客は戻ってきた2万円を2人で均等に分け、結果的に一人2万円ずつ支払ったことになりました。
ところで…
この2人組が支払った金額は、2万円×2人=4万円。従業員がネコババした1万円を合わせると計5万円になりますよね。でも元々は一人3万円ですので、前金で6万円支払った筈なんですよ…残りの1万円は何処に消えたんですかね。
怖い話投稿:ホラーテラー かわうそさん
作者怖話