中編3
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三面鏡

病院タグで、未来が映る監視カメラがあるそうだが、この話は全く逆のものが見える話である。

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三面鏡を知らない者はいないだろう。

観音開きの扉がついた鏡で、その扉にも各々鏡がついている。

それら三枚の鏡はそれぞれ向き合っているので、自分の姿をいろんな角度から見ることができるというものだ。

ここの住人なら、こんな遊びをしたことがあるのではないかと思う。

「三面鏡に自分を映し、鏡を少し閉じる。

すると、たくさんの自分の顔が映る。

もし、その顔のひとつに、自分の顔ではないものがあったら…」

…私がある怪しげな店で買った三面鏡は、すこし不思議な鏡(?)というもので、値段もすこぶる高かった。

何が不思議かというと、夜中の12時に上で述べた遊びをすると、そのたくさんの自分の顔の中に、ひとつだけ何年後かの自分の顔が映る、というものだった。

ありふれた話だ、と思いつつもオカルト好きの私はつい購入してしまった。

購入した日の夜12時。

早速私は試してみた。

古くて気味の悪い形をした鏡だが、鏡面はわりときれいだ。

…鏡を少し閉じる。

たくさん映る自分の顔。

どれも同じ顔、同じ表情だ。

しかし…よく見ると、その中のひとつに違う顔が確かにあった。

それは間違いなく私の顔なのだが、青白く、目はくぼみ、虹彩に光がない。

視点の焦点も定まっていなくて…それは、まるで死人のような不気味な顔…

というよりも、明らかに死んでいる!

…嘘である。

意外にもそこにあった顔は、若かりしころの私だった。

決してハンサムではないが、今とは違い毛も多い。

しわが少なくて、眼光にも力がある。

…彼は少し笑った気がした。

…私は鏡を閉じた。

話とはずいぶん違う。

まるで、正反対のものを映すようだ。

が、不思議な鏡であることには違いがないので、私は満足した。

それから、私は幾度となく、同じ遊びを繰り返した。

うまくいかないときもあり、成功するときもある。

成功した場合は、いつも若い頃の自分を見ることができた。

…それから何年かが過ぎた。

夜中12時。

また、私は鏡を見た。

そこには、若かった頃の自分は映らない。

かといって、年老いた自分が映るわけでもない。

映るのはまるで死んでしまったかのような、青白い、目のくぼんだ、視点の焦点が定まっていない自分だった…

何度見ても同じ顔しか映らなかった…

私は、鏡を閉じ、とぼとぼと彷徨った。

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…それは不幸な事件だった。

彼は、ひどくオカルト好きで、そのためなら金を惜しまないことですっかり有名になっていた。

住んでいる家も大きい。

つまり、金持ちと思われたのだ。

確かに彼は金を持っていた。

怪しげな鏡を大金はたいて買ったこともあった。

結果、それが彼の不幸を招いた。

夜、彼が怪しげな鏡を覗いていると、強盗が彼の家に侵入した。

以前から目をつけられていたのだろう。

強盗は有無を言わさず、彼の背中をナイフで刺して彼を殺害。

現金はもちろん、他にも金目のものはほとんど奪われた。

しかし、鏡は大きかったためか、盗られずに残った。

…主を失ったその家は、今は誰も住んでいない。

しかし、誰が見たのか、

夜12時になると、

三面鏡がかってに開かれ、かってに閉じられるという…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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