しとしと、しとしと。
雨の日の公園は人が居ないから、私にとって誰にも邪魔されずうんと羽を伸ばせる場所だった。
彼女と出会ったのも、そんな雨の日。
「あれ? 誰か居ると思わなかった」
なんて声を掛けてきたのは髪が茶色くてショートヘアーの活発そうな女の子。
私の長い黒髪とは対照的なのが羨ましくて心の中では、いいなぁ。なんて思ったりして。
「こっちもびっくりー」
笑いながら言うと、彼女もニコリ。
「ねぇ遊ぼう?」
「うん良いよ、何して遊ぶ?」
うーんと彼女は唸りながら考えた。私もうーんと唸りながら考える。
「鬼ごっこは?」
最初に提案したのは彼女だった。
「びちゃびちゃになっちゃうよ」
「じゃぁ高鬼」
「二人じゃつまらないよー」
「えーどうしよー」
彼女は困った様にむくれた。私も困った様に苦笑いする。
すると彼女は、名案が思いついたのか顔を明るくして笑った。
「私の家に行こう、ピアノあるよ」
「あ、行く行く」
お母さんには、知らない人について行っちゃいけない。とか言われてたけど彼女はもう知らない人じゃなくて友達だし
それに他の子の家にも行った事あるし大丈夫だよね。
なんて簡単に私は考えながら頷いた。
公園は、私の住むマンションを真っ直ぐ歩いて右に曲がるだけ。
彼女に手を引かれて歩いた道は、私の家からずっと真っ直ぐ歩いていった所にあって、結構大きめな一軒家だった。
石が間をあけて玄関まで置いてあって
土は雨でぬかるんでた。近所にはない縁側があって、どちらかと言えば和風なお家。
「ここだよ」
彼女がニコリと笑うから、私も釣られてニコリ。ガラガラと音を立てて硝子玄関をあけた彼女は大きな声で「ただいまー」と言った。すると中からお婆ちゃんが出てきて「おかえり」と言ってくれる。
優しそうなお婆ちゃんで、なんだか暖かい気がした。
「お友達かい?」
「うん!」
「はじめまして、紅です」
「はじめまして」
お婆ちゃんは私に頭をふくタオルを貸してくれて、私はニコリと笑う。お婆ちゃんもニコリ。
それから私は彼女とピアノをしたり絵をかいたり、お婆ちゃんと話たり。夕方になって帰り際に彼女は私に宝物だと言うトゲピーのステッカーをくれた。
「ありがと」
「大事にしてね」
「うん」
数日後、彼女の家は見つからなかった。
そして私は彼女と二度と会う事はなかった。
トゲピーのステッカーは今も家にある
怖い話投稿:ホラーテラー 紅さん
作者怖話