中編5
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嘲笑の弾丸

パアン!

火薬音で目覚めると、僕は白い部屋の中にいた。

寸法は10M四方程か。勿論僕の自室ではない。

「なんだここ。どうして…?」

うろたえながら床を見ると、

「うわ!」

うつ伏せになった人がいた。

女性の様だ。

側頭部に穴が開き、血がドクドクと出ている。即死だろう。

「自殺死体…?今の銃声か!?」

傍に拳銃が落ちている。

事態が把握出来ず、とにかく周囲を見渡した。

部屋は正立方体、中央に三つ机があり、うち二つにに何かが乗っている。

向いの壁には床から1M程の高さに、一辺1Mくらいの正方形の扉がある。

扉には紙が貼られていた。

「字が書いてある…」

部屋の見取図も書かれていた。

僕と相手の部屋は、この扉の先で細い通路で繋がれており、丁度鉄アレイの丸い

両端を立方体にした様な形になっているらしい。

空の机にはさっきの拳銃が置いてあったのだろう。他の机には、バット、それと15cm

程の長さの銀筒を二本束ねた器具がそれぞれ置かれていた。

「冗談だろ…」

状況は概ね飲み込めた。

そしてぞっとしながら悟る。

少なくともこの部屋には他にドアの類は無い。ここへ僕が運び込まれたのはあの

扉の向こうからなのだ。

「どの道あの扉を抜けなきゃならないんだな。くそ…」

床の死体を見る限りでは、この場での命のやりとりは冗談でもなんでもない様だ

死ぬのは御免だ。

少し前に、恋人と別れた。

遊び癖があった僕は、凄まじい借金を作ってしまい、取立が彼女にまで及び、危

害を加えられた事が原因だ。

「本当に酷い目にあったわ。死にたい。楽になりたいの」

「死んだら元も子もないよ」

「今でもあなたが好きよ。でも心から憎んでもいる。死ぬ時はせめて精一杯あな

たに復讐してやりたいわ」

「後ろ向きなんだね」

ひっぱたかれた。

でも、生き抜いてこその人生だろう?

今はまだ僕は元気だ。

だが遠からず、飢えや疲労に蝕まれ『敵』との対決は不利になる。

即行動だ。

僕は武器を選ぶことにした。

やはり銃か。他の武器は頼りないし。

いや待て。

武器は一つだけ選べとは書いていない。

いっそ全部携帯しよう。これで有利になればいいけど。

ふと死体をみた。やはり大変気になる…

この人は先日別れたあの恋人だ!

顔を確認する。血まみれだが間違い無い。

僕は彼女と共に閉じ込められたのか。

そしてあの文面によれば出られるのはただ一人。

生きたがりの僕と死にたがりの彼女。

「僕を生かす為に…?」

彼女は真面目で、復讐なんて出来るはずのない人だった。

結局、人の為に身を削るような生き方しか出来なかったのか。

「それが、後ろ向きだっていうんだ…」

僕は唇を噛み締めた。

一人しか脱出出来ないのなら、僕は彼女を殺しただろうか?

「何て悪趣味なゲームだ…!」

理不尽さに怒りがこみ上げる。

考えながら気付く。

『敵』も二人の可能性が高いのだ。

しかし、もう、負けられない。彼女の為にも。

僕は全ての武器を携帯して扉を開けた。

通路を這って進む。向こうの扉に手が届く。

蹴破り、銃を構える!

めくら撃ちに、前、右、左に発砲した。

白い立方体の部屋。

三つの机と武器。

しかし…

(誰もいない!?)

向かいの壁に長方形のドアがあり、ノブに何かが架かっている。

手に取ってみた。液晶パネルのついた機器で、画面には部屋の見取図が表示され

ており、そこに光点が二つ点き、端にマジックで「key position」と書いてある

ドアには鍵がかかって開かない。

この機械はいわゆるレーダーで、このドアの鍵が、光点の位置にあるようだ。

画面内の光点の一方は僕の体の位置と重なっている。

ポケットを探ると金具が一つ入っていた。

形状から見て、別の金具と合体させて鍵が完成するらしい。

もう一つの光点は…

僕が目覚めた部屋を指していた。

「そうか」

気付く。

この部屋にいた『敵』こそ彼女だったのだ。

この部屋の机の武器は鞭、ハンマー、そして何のつもりかマチ針が残っていた。

「これじゃどの道勝負にならない…」

それで彼女は、僕の銃を使い、自害したのだ。

彼女の死体まで戻り、鍵を捜す。

おかしい。

無い。

ついに裸にした。

それでもレーダーは彼女の体を示す。

「まさか」

体内か。

飲み込んだのか。

これが…

「復讐のつもりか!」

僕の為の自殺などでは無かった!

彼女の部屋の武器には刃物が無かった。

彼女は刃物無しには鍵を取り出すことは出来まいと、この復讐を決行したのだ。

しかし、彼女は無知だ。

僕の部屋の武器に、刃物がある。

「この銀筒はね、開くと刃が出て来るんだよ。

バタフライナイフっていうんだ」

そんな知識は持ち合わせて無かったのだろう。

躊躇いはない。彼女を解体する。ナイフを手に取った。

瞬間、小さな爆光が閃き

僕の右手とナイフが弾け飛んだ。

「うあああッ!?」

そして悟る。

「そうだマチ針がおかしいんだ!くそ!ああ!

バタフライナイフの事も知ってて!」

マチ針はきっと彼女の私物、僕へのフェイクだ。

彼女の武器の一つは、恐らく小型の爆弾の類だ。

それをナイフに取りつけてあった。

「やられた…!」

致命的な怪我ではないが、血が吹き出る。

刃物無しで、利腕を失い、彼女を解体なんて。

「不可能だ…」

僕は絶望感で脱力した。

何時間経ったろう。

出血は治まりつつあるが激痛は止まない。

誰が何故僕らを閉じ込めたのかは分からない。

彼女の意志なのだろうか?

そして、目覚めた時には、僕は既に終わっていたのか。

「撃ち殺してくれれば良かったのに…」

大怪我したままで餓死など御免だ。

吐気がする。

もう楽になりたい。

拳銃をこめかみに当てる。

「まさか、僕が自殺するなんてな…」

カチリ。

しかし、弾は切れていた。

「生きたがりなんでしょ?」

と誰かに笑われた気がした。

怖い話投稿:ホラーテラー クナリさん  

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