中編4
  • 表示切替
  • 使い方

今でもよくわからない

今から約3年前に実際に体験した話をします。僕はかなり怖かったです。

当時僕は大学3年生で、その頃はデパート巡りを楽しみにしていました。僕の町にはデパートが3つ4つあって、何をするわけでもなくただブラブラするだけの楽しみです。

友達も数人いました。しかしどちらかと言えば一人でコソコソすることを好み、そういうちょっとした一人遊びには誰かを巻き込まず、一人でゆっくり楽しんでいたことを憶えています。

その日の夕方もやはりデパートに行こうと思い立ち、服を着替えて外に出ました。時間は憶えていませんがちょうど今ぐらいの季節で、日は落ちかけ、風景も青黒い色と、影に塗り潰されて輪郭が分かる程度、といった時間帯でした。

僕は原付バイクのエンジンをかけ、国道と合流するやや細めの直線一本道に入って左側につけ、国道に向けて原付バイクを走らせました。

この細い一本道は僕の住むアパートの前を通っていて、道沿いにはアパートだけでなく一軒家も結構あり、また道自体もややくたびれている程度で風景にもこれと言った特徴らしいものは何もありません。それが付近に住む人々なのかどうかはわかりませんが、この道を散歩する人もよく見かけました。

僕がアパートを出てこの道に入った時も、前方右側に、やはり人が歩いていました。肌寒かったし、もう暗くなりかけてはいましたが、それでどうと言うわけでもありません。不思議な光景でも何でもなかったです。こちらに向かって歩いて来ているのか、あるいはその逆なのか、その距離ではわかりませんでした。

ただ距離が縮まるにつれて、何かおかしい、と思い始めました。僕は車やら原付バイクに乗っても余程の事が無い限り、スピードを出すことがないのでよく観察できました。

その人はものすごく左右に揺れていました。僕は最初酔っ払いかと思ったんですが、どうも酔っ払いのそれとは違う、何というか、あれだけ揺れて歩いているのにそのラインは外さず真っ直ぐ歩いている、実にそんな感じでした。

「なんやこのガキは」と思いながらもさらに距離が縮まると、それは本当に女の子の子供でした。子供と言ってもそれほど小さくはなく、小学校高学年から中学生ぐらいといった年代で、白の半袖シャツにハーフパンツで髪の長さは肩の上ぐらい。結構憶えています。

その女の子が腕を前方にダラリとぶら下げ、膝も地面に付かんばかりに前のめりで左右にぶんぶん揺れながらこちらに向かって歩いて来るわけです。

あまりの光景に呆気にとられながらも、さすがにそこは不気味さが勝り、すれ違う時は首をひねらず目だけでチラッと見ましたが、顔は全く見えませんでした。

すれ違った後、僕は前方から車が来ていないことを確かめ、静かに、気付かれないように振り向いてみました。

次の瞬間僕はフルスロットルでその道を飛ばし上げ、国道に踊り込んで近所のスーパーに逃げ込みました。まさに脱兎の如く、です。

そいつはピタッと歩みを止め、前のめりのまま上半身をグルリとひねってこちらを見てきました。顔は全くわかりませんでしたが、目が真っ白で、暗い中、嫌に目立ったことを憶えています。

スーパーの中をうろうろしながら今起こったことをよく考えました。あれは何だったのだろうか。人間じみた化物なのか、それとも化物じみた人間なのか。

結局僕は後の方を採用しました。人間の方がまだ納得できる気がしたし、信じてはいるものの、僕は化物なんかの類を見たことがなかったからです。そして自分で勝手に人間だと判断すると、今度は次第に腹が立ってきました。不用意に他人を驚かせやがって。「あのクソ餓鬼め」

僕はスーパーを出て再びエンジンをかけると、原付バイクをぶん回して道を引き返し、そして現場に着きましたが、しかし、というかやはり何も無く、日も完全に没して、原付バイクのエンジン音とライトだけが静寂と闇を切り裂くばかりでした。

僕はデパートのことなどすっかり忘れて友達に電話をしました。ちょうど友達もこちらに遊びに来る途中だったらしく、すぐに現れて僕は事の始終を話しました。しかし信じてもらえず、それならば、ということで一応護身用に僕は素振りに使っていた金属バット、彼には未使用の伸縮つっぱり棒を持たせ、現場に向かいましたが、結構な捜索にもかかわらず見つけることはできませんでした。

今でもその道はよく使いますが、まだ見つかっていません。もし見つけたら文句を言ってやろうと思っているのですが。

読んでくださってありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
23300
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ