短編2
  • 表示切替
  • 使い方

ロボコップさん

10年前の話です

私には当時、小学2年生になる娘がいたのですが、妙なことを言うよになって困っていました。

早朝、トイレから出ると

「お母さん、お母さん、お家の前をロボコップさんが通っていったよ!わたし聞こえたもん」

「あんた何言ってるんの?ここは日本だからロボコップはいないのよ」

「えー絶対にロボコップさんだったのに…」

そんな会話を何日か繰り返したのを覚えています。

娘の夢を壊さないようにロボコップは外国にしかいませんよと教えていました。

娘は主人の影響で、あの映画が大好きでしたし。

変な妄想をしているのか…

私を困らせようとしてるのか。

当時は凄く悩みました。主人に相談しても、気にするなよ、かまってもらいたい年頃なんだと軽くあしらわれました。

嘘をつくような子では、なかったので心配でした。

そして娘に「今度、ロボコップがお家に来たらママに教えてね」と言い聞かせ、その日が来るのを待つことにしました。

それから2、3日後です。少し辺りが明るくなってきた早朝に、娘がトイレから飛び出してきました。

「お母さん!きたよ、きたよロボコップ」

と、寝ている私の腕を引っ張ってきました。

慌てて娘とトイレに駆け寄ると外から

『…ガシャ、…ガシャ』

と音を立てながら、こちらに近づいて来るのがわかりました。

「ねっ?ロボコップさんいるでしょ!」

と純粋な眼差しで私を見ています。

私は、正体を確認する為にトイレの窓をそっと開けました。

ちょうど家の前を奇怪な音を立てながら通過していく物体を見た瞬間、体中の血の気が引いていくのがわかりました。

真っ赤な鎧を身に付け、頭や背中に何本も矢が刺さっています…

右手は刀を振り上げ、足を引きずりながら何かを追いかけているように見えました。

『ガシャ、ガシャ』と音をたてながら。

私は高鳴る気持ちを落ち着かせ、そっと窓をしめ、娘に言い聞かせました。

「良かったね!ロボコップさんだったよ。お家のまわりをパトロールしてくれてるんだね。安心だねっ」

と…

娘は笑顔で頷いてました。

絶対言えませんよね…

落ち武者だったなんて。

怖い話投稿:ホラーテラー ひなたんさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ