中編3
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悪口

大して怖くもないのだが、ほんとにあった怖い話。

一部フィクションもあるが、まあ、ほとんどは本当のこと。

…その日の夜勤は暇だった。

患者はみな寝しずまり、追加眠剤を要求する者もいない。

急変の恐れのある患者もいない。

カルテも早々に書き終えた。

こうなると、看護師達のすることは「おしゃべり」である。

その日の夜勤はAとBという仲良し同士の看護師だった。

はじめはちょっとした世間話をしていた。

しかし、ふたりとも普段からの仕事のストレスが溜まっている。

ここぞとばかり、同僚や上司、さらには患者の悪口まで言い合いだした。

こうなると、女性はストップがなかなか効きにくい傾向がある。

話はだんだんエスカレートしていった。

「主任ってさ、どれだけ長く看護師やってるのか知らないけど、全然わかってないわよねー」

「C先生の患者って全然よくならないわよね。ほんとヤブ医者の典型!」

「そうえば、あの患者さん、全然家族来ないわね。きっと入院前はみんなにひどいことやってたに違いないわ!」…

あることないこと…それこそどこまでが事実なのかわからなくなるほどに、たくさんの噂話や悪口を言った。

ところで、たいした根拠はないのだが「他人の悪口を言うとよくないことが起こる」と感じたことはないだろうか?

例えば、昼休みに上司の悪口を言う。

その後、仕事でちょっとした失敗をする。

そのとき、上司に怒られると思いきや、優しくなぐさめてくれる。

悪口を言った自分がはずかしくなる…

といった具合だ。

別に、ここで上司が関与しなくても構わない。

とにかく人のことを悪く言ったあとに、いやなことが起こったら「あんなことを言ったから…」と妙な反省をする、ということは意外と多くの人間が経験している。

話を戻そう。

…AとBはさんざん患者や同僚の悪口を言った後、Aだけが病室巡回をした。

一部屋ずつ懐中電灯で照らしていき、患者の無事を確認する。

すると、一人の患者がシーツを細長く切ってドアノブにかけ、それを首に巻いて泡を吹いていた!

すぐにAはBを呼んだ。

Bが来るまでの間、Aは患者の気道を確保し、人工呼吸と心臓マッサージを懸命に行った。

しかし、Bが到着するころには、患者は手遅れの状態になっていた。

「あんなこと言ってたから…?」

二人はそう思った。

その悪口の中には、今死んだ患者のことも多く含まれていたからだ。

「きっと、神様か何かが私達を見ていて、罰か何かを与えたんだわ…」

二人は素直に反省した。

次の日、看護主任が病院へ出勤していたので、ふたりは状況を報告した。

もちろん、悪口のことは隠して。

主任は

「そう…大変だったわね。おつかれさま。今日はゆっくり休んでね。」

と優しく労をねぎらってくれた。

また、二人は恥ずかしくなった。

患者に身内はなかった。

翌日、仕方なく病院スタッフが患者の荷物をまとめていると、盗聴器と盗撮カメラが発見された…

それが元で、盗聴器が他にもしかけられているのではないか?と病院側は不安に思った。

…ある日、抜きうちでナースステーションを徹底的に捜索した。

その結果、ロッカーの裏、主任専用の机の鍵つき引き出し、診察室のベッドの裏、さらには休憩所の冷蔵庫の裏…などから5つの盗聴器やボイスレコーダーが発見された。

…怖くなくてごめんなさい。

でも、ほんとの話なんです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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