飲み会でつい盛り上がってしまい、帰りの終電車に慌てて飛び乗った。
やれやれと席に着こうとした時、おかしなことに気づいた。
客は4人くらいですいているのに、1人を除いて誰も座っていないのだ。
座っている客は、私と同じ20代くらいの女性。
立っている客は、スーツ姿の中年男性、茶髪の若者、白髪のおじいさんの3人。
すいているにもかかわらず、その誰もがつり革につかまり、座ってる客の目の前に集団で立っているのだ。
3人の男性はいずれも青白い顔で、女性をじとっとした目で見つめている。
女性は目の前の男たちを意にも介さず、文庫本を読んでいる。
酔っていたのも手伝って、私はその姿を呆然と眺めていた。
「××~、××です」
アナウンスにハッとした。私の降車駅だ。
と、突然、女性が立ち上がり、電車を降りた。
男達はその様をじっと見ていた。
慌てて後を追うように降りようとした私の背後から、声が聞こえた。
「あんたも見えてたんだろう?」
電車は去った。
ホームには誰もいなかった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話