短編2
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消失

看護士をしてる友人から聞いた話。怖くはないです。

ある時、友人が担当していた若い女性の患者さんが亡くなった。

彼女の両親は早くに他界し、見舞いに来る恋人や友人もいなかった。

何度目かの入院の時、彼女はもう自分が長くないことを知り、病院で独りで死ぬことを決めた。

家具を棄て、思い出を棄て、家を引き払い、彼女はいくばくかの荷物だけで最後の入院生活に入った。

「死ぬのなら何もかも消えてしまいたいの。私と言う人など、まるでいなかったみたいに。」

彼女は友人にそう言っていたそうだ。

「私のいた証拠は全部消してほしい。だから焼く時は、この荷物と一緒に、その時着てた病院服のまま焼いてね。」

というほどの徹底振りだったという。

彼女の葬儀は、遠縁だという親戚3人だけで行われた。

彼らは彼女の遺言に従い、彼女の全ての持ち物を棺に入れ、病院着のまま火葬にした。

しかし骨壺に入れるために、火葬前に彼女の髪は少しだけ切られ、遺髪とされた。

彼女の体が焼かれ始め、煙突から煙が出始めた頃、

彼女の遺髪から突然火の手が上がった。

驚いた親戚の手から遺髪は床に落ち、包んだ紙ごとほんの数秒で燃え尽きた。

周りには髪を焼いた後の独特の匂いが漂った。

また火葬が終わってみると、台の上には灰が広がるばかりで、拾うべき骨が1つとして見当たらなかったという。

「あの人完璧主義者だったから。」

友人は寂しそうに笑った。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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