中編5
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自業自得

ずいぶん前の事だが、友人が事故に遭った時の話。

最初に言っておくが心霊関係の話ではなく、怖くはないかもしれない。

だけど個人的になんか怖かったので書いてみる。

仕事の帰り、車を運転していた友人が交差点に差し掛かった時、横から突っ込んできた車を避けようとして電柱にぶつかり 友人の乗っていた車はエンジン部分が潰れ大破した。

時間は夜の11時くらいで、車もほとんど通らない場所。

友人側が黄色の点滅で、突っ込んで来た方が赤の点滅信号だった。

たまたま 友人の後ろをついて走っていた見知らぬ男性が、車から降りて慌てて駆け付けてくれて、「大丈夫ですか!」と中々開かなかった車のドアを開けてくれたのだと言う。

友人は額を切り足を痛めていたが、どうにか無事だった。

相手の車は と見てみると、その車は交差点の真ん中で横転していた。

古い型の軽自動車で、小さな車だった。

『大変だ!』と、友人が痛む足を引きずりながら近づくと、横転した車の運転席側の窓が開き(手動式らしい)、中からおじいさんが「よっこらしょ」と出て来た。

見た限りでは怪我などはないようで、ホッと安心した友人がその人に声をかけようとした時、中からもう一人出てきた。

今度は女性で、多分おじいさんの奥さんだと友人は思った。

どうやら奥さんにも怪我は見当たらないようだった。

さっきのドアを開けてくれた男性が友人の隣に来て、

「今 救急車を呼びましたから。」

と、教えてくれた。

「すみません、ありがとうございました。」

と友人が礼を言うと

「それにしても相手側は、あの車にずいぶん乗ってたんだなぁ。」

と男性が驚いたように言うので見てみると、三人目がすでに出ていて、今四人目が車外に出ようとしていた。

うわ、ホントだ……。四人も乗っていたのか、と友人も驚いた。

全員が年寄りで、しかも皆へらへらと変な笑いを顔に浮かべている。

「いや〜、派手にやっちまったな〜!」

「びっくりしたよねぇ。」

なんて呑気な会話が耳に入り、だんだんと友人も腹が立ってきた。

そっちは怪我もなく無事なのだろうが、こっちは怪我してるし車は多分廃車だよ!

突っ込んで来たくせに謝りもしないのか!と、老人に文句を言ってやろうと思い近寄ると、さらに車の中から五人目が出てくるのが見えた。

「えーーーっ!!」

思わず横にいた男性と同時に声を上げてしまった。

今の型の軽ワゴンと違って、昔の型の軽自動車はとにかく車内が狭い。

その中にどうやってこの人数が乗っていたのか。

信じられない事に軽自動車の中には、全員で六人もの人が詰め込むように乗っていたそうだ。

それでかすり傷一つないなんて、奇跡としか言いようがない。

友人が呆然としていると、「今救急車が来ますから!」と男性が老人達に告げた。

それを聞いた老人達はゲラゲラ笑いながら、

「救急車なんて大袈裟だね〜、いらないよ そんなの。」

「まぁ、タクシーがわりにはなるかな?」

などと、まるで他人事のように話している。

「いや、貴方達は大丈夫かもしれないですけどね、彼は怪我してるでしょう!見えませんか!?」

と男性が少しイラついた様子で怒鳴ると、老人達は

「……あぁ。」「まぁね。」

と、特に関心を示すわけでも謝ろうとするでもなく、そっぽを向いてしまう。

(なんなんだ、こいつらは……!)

内心腹が立って仕方なかったが、もう立っているのもしんどくなった友人が道路脇にしゃがみ込むと、最初に運転席から出てきたおじいさんが友人の元へやってきた。

そして何も悪びれる事もなく、友人にこう言ったそうだ。

「じゃあ、あんたは救急車が来たらそれに乗って行きなさいよ。

でもその前に私の車を起こしてくれないかね?若いのが二人ならすぐだろ。私達は帰らないといかんのでね。」

それを聞いた友人は目眩を起こし、男性はあんぐりと口を開けていた。

恐ろしい程に自己中心的!

「な、何を言ってるんですか、あんたは!

そんな事できるわけないでしょ!?」

「それに警察も来るんですから、すぐに帰れるわけないですよ!!」

と二人が言うと、とたんに老人達の顔色が変わった。

「え!?警察!?」

「なんでそんな余計な事をしたんだ!」

「大袈裟にする必要ないでしょーに、たいした事ないんだから!」

と、さっきまでのへらへらとした態度が一変し、凄い形相で友人を責め始めた。

その内 「年寄りを敬う気持ちがカケラもない」などと言われる始末。

呆れるのを通り越して脱力している友人の代わりに、男性が

「いい加減にしなさい!貴方達じゃなくて彼が被害者なんですよ!」

と一喝した。

そして 「僕が証言してあげますから、大丈夫ですよ。」

と、友人に言ってくれた。

老人達はギャーギャーと怒鳴り散らしていたが、サイレンの音を聞いたとたんに、焦りながら六人で なんと軽自動車を起こしたそうだ。

そして慌てて車に乗り込み(助手席に二人乗った!)走り去ろうとしていたが、その前にパトカーが到着し、止められてしまった。

そこで諦めると普通なら思うが、老人達は警察官の制止を振り切り逃げて行った。

が、やっぱりと言うか当然と言うか、軽自動車はたった200メートルも行かない内に再び事故を起こし、民家の塀に激突した。

今度は無傷という奇跡は起きず、一人が死亡、重軽傷者も出る大惨事となってしまった。

話を聞いた俺も、彼らの思考というか、一体何を考えているのか全くわからなかった。

常識なんてまるで無く、俺の知っている年寄りとはだいぶ違うんだなと思った。

自業自得としか言いようがなく、なんとも後味が悪かった。

年寄りは弱者だから何をしてもいい、全て若い者が悪いのだ、とでも言い出しそうなその人達に 俺は薄ら寒いものを感じた。

今の若い人は……なんてよく聞く台詞だが、老人にも当て嵌まるんだろうか。

俺はやっぱり、お年寄りは大事にしたいし、じいちゃんばあちゃんも大好きだ。(もう亡くなってしまったけれど)

だけどそれは、『尊敬できる』というのが大前提にあるからだ。

「俺達は、変な年寄りにはならないようにしような。」

「ああ、そうだな……。」

俺と友人は、そう頷きあった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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