中編3
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青春の影

大学も新学期が始まり、

構内は一時的に、

フレッシュな新入生と盛んなサークル勧誘の坩堝と化す。

でも僕は、その光景を見ても微笑ましい気持ちにはなれない。

2年前のことを思い出してしまうからだ。

2年前は僕も、これからの学生生活に期待する新入生だった。

事務で入学手続きを終えた僕は、

そのまま構内を散策することにした。

もう日は傾き始めており、

茜色に染まる構内は、

とても感動的だった。

最後に正門からメインロードを歩いた。

早くもサークル勧誘用の立看板が乱立し、

肉体労働担当と思しき人々が忙しそうにその近くで、

紐を縛ったり板に釘を打ち付けていたりしていた。

メインロードが終わり、

看板も途切れがちになってきた頃、

不意に声をかけられた。

個々の学部棟に繋がる横道に、男性が1人立っていた。

道の端には特に大きい看板用の板が、

沢山積み上げられており、

男性はそのうちの数枚を起こそうとしているようだった。

「縦に立たせたいんですけど、

1人じゃちょっと厳しそうなんです。

悪いんですけど片側を持って、

手伝ってもらえませんか?」

眼鏡をかけた細めな人で、

確かに1人ではきつそうだった。

僕は了解して、男性の向かい側にかがみ、板の下に手を入れた。

「いいですか?持ち上げますよ。せーの!」

僕の合図で、4枚の板を一気に持ち上げ、縦へ方向を変えた。

左手で板の下を、右手で側面を抱える格好になり、

縦に長く厚い板で、

一瞬目の前が塞がれた。

板を地面に立てた時、

目の前に来た側面に、

何か白いものが貼りつけられていることに気づいたけど、

もう遅かった。

自分のくしゃみで目が覚めた。

暗い空が見えた。

わけもわからず起き上がると、

自分がさっき板を起こした場所が見えた。

物置きになっている道の端の、

向かい側にあるベンチに、

寝転がっていた。

4枚の板は少しずれていたけど、

変わらずその場所にあった。

その側面、抱えるとちょうど自分の顔の位置に来る部分に、

何かを貼っていたテープの跡が僅かに見えた。

起きてからずっと頭がガンガンしていた。

そして、ポケットの中に何も入ってないことに気づいた。

「ガーゼに染み込ませた麻酔をかがされて、

財布と鍵を奪われた」

もう閉まっていたので、翌日事務に訴えたけど、

麻酔の証拠が無いため、

事務は本当に事務的なことしかしてくれなかった。

財布には、新生活を始めるにあたって張り切っておろした、

4万円が入っていた。

入居したアパートの鍵も、

その日に大家さんにもらったものだった。

あれ以来僕は、

サークルの勧誘準備を見る度に、

苦々しい気分になる。

しかし僕は毎年この時期になると、

髪を茶色に染め、伊達眼鏡をかけて、

放課後の構内を巡回して、

あいつを探している。

あいつは常習犯だ。

そして絶対にまたやる。

去年は見つけられなかったけど、

それは恐らく1年前に僕をはめたばかりだったからだ。

今年は去年よりも、

あいつに再会する可能性が高い。

僕は、その時あいつに、

何をしてやるかも、

もう決めている。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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