大して怖くないんだが、小さいころに見てた夢の話。
そしてそれにまつわる実際の俺の体験談。
文章が下手くそだが暇だったら読んでくれ。
3人?いや4人の子供だ…
全員が痩せこけてる上、寂しそうにこっちを見てる。
心の中でどこかで見たことのあるような懐かしい感じがする。
ただ本当に悲しそうで物欲しそうな表情。
そう、何かを訴いかけるような。
背景は真っ白でよどみがない純白。
その中でその子供たちは奥の方へ吸い込まれるようにどんどん遠ざかっていき、最後には見えなくなる。
みんなは小さいころに見た夢を今でも覚えていることはあるだろうか。
俺は一つだけ強烈に印象に残っている夢がある。
それが上述したような子供の出てくる夢だ。
くさ男(当時5歳)は3年?くらいの間ほぼ毎日同じ夢を見ていた。
お決まりの子供。お決まりの場面。お決まりの表情。
しかも決まって1日1回しか見ない。(大体が3部作なのだが…)
毎日のように「またあの夢みたよ~」とおかんに報告していた記憶がある。
その時は「そう…」としか言われなかった。
話は少し逸れるのだがちんちん家は先祖代々山口の人間で、俺自身ものごころをついたときからは広島で育ったのだが墓やちんちん家の氏神様を奉った神社は山口にある。
なので盆と正月には必ず実家のある山口に帰りお墓参りと厄払いを行う習慣がある。
ある正月。そう、あれは確か中2の時だ。
そのころになるとあの幼いころに見た夢はほとんど見なくなり、遠い記憶の中であんな夢も見てたなーってくらいの記憶になっていた。
いつものように氏神様が奉ってある神社へ行き、その後先祖代々の墓のあるお寺に行った。
生まれたときから毎年毎年欠かさず新年の挨拶に行っていて、その寺のことはある程度は分かってたつもりだったが、ふと寺の片隅に小さな碑があることに気付いた。
横には何やらその碑がたっていた由来やらなんやらが立札に書いてあったんだが、読むのがめんどくさかったのでスルーし、こんなものがあったんだくらいの認識を持っただけでお決まりの挨拶を済ませそのまま実家に帰った。
その晩、夢を見た。
そう、あの子供たちの夢を。
しかも(起きた後で思ったのだが)夢が本当に鮮明で、子供の悲しそうで物欲しそうな表情ははっきり分かる。
声は聞こえないのだが口をパクパクし、何かを訴えているようだ。
起きた後いつになく懐かしい夢を見たなと思い、ぼーっと夢の余韻に浸っているとなぜかあの墓のある寺にもう一度行かなければいけないと思った。
これは本当に直感なんだが胸騒ぎというか、お告げというか、なんか急にいてもたってもいられなくなり、朝飯を食べた後犬の散歩がてらお寺に行くことにした。
昨日も来たなーと思って寺の縁側で犬と遊んでると、住職さんが出てきたので軽く挨拶。
大きくなったねとか学校のこととか世間話をしてたんだが、ふと思い立って、昔から見ている夢のことを話してみた。ほんと何の気無しになんだが…
そうすると急に「くさ男くん…ちょっとこっちへ」と言われて前日見つけた碑のところへ連れて行かれた。
前日はスルーしてたんだが、よくよく石碑を見るとそこには「飢民供養塔 明和元年」と書かれてる。
なんじゃこりゃと見ているとその石碑の由来を住職が話始めた。
その概要が以下の通り。
『享保17年(1732年)に山口県全域で大規模な飢饉に見舞われた。
後に防長の大飢饉という。
特に俺の実家の村の餓死者が凄まじく当時758人の村で700人を超える死者が出た。
特に老人・子供が飢餓に苦しみ、口減らしのために殺されることは無かったようだが、本当に多くの人が死んだようだ。
それを供養するためにその寺の16代目の住職・尋誉大竜上人という偉い坊主が石碑を作った。』
そして俺の先祖はその飢饉の生き残りの一人ということ教えてもらった。
正直、「へぇ」というくらいであまり関心も湧かなかったのだが、「君の先祖も何人かが飢饉で亡くなっているんだと言われた。
まぁそりゃ少しはいるよねとか考えていると、今度はお墓へ連れて行かれた。
お墓は最近立て替えたばかりで、案外立派な作りをしている。
いつもは正面からしか見てないし、ローソクつけて線香つけて、まんまんちゃーで終わりなのだが住職は「こっちへ」とお墓の後ろ側へ俺を連れていった。
そこには…4体の小さなお地蔵様。
お地蔵様といっても表情はお地蔵様のものではなく、何か子供を想像するような表情をしている。
あれっどっかでみたような…
っとここまでくれば大体話が読めるだろうが、あの夢に出てきた子供たちにそっくりだった。
長い年月風雨にさらされはしてるものの、その表情ははっきりしておりどこか懐かしい感じがする。
よくよく見てみるとどの家の墓にも小さな地蔵があり、表情は一つ一つ違うものである。ちょっと大げさなのだが兵馬俑のような…
住職が言うには、その飢饉で亡くなった子供の顔は痩せこけ、飢餓に苦しみ本当に見られたものでは無かったという。
そのため、一人ひとりの親なり親戚がせめてもの弔いということで子供の顔そっくりのお地蔵様を作って供養したそうだ。
住職のこの話を聞いて小さなころからの夢の答えが出たような気がした。
次の日…
俺は朝早く起き大量の握り飯を作った。
形は歪だがありったけの思いを込めて。
「おはようございます」
突き抜けるような晴天の朝だった。
住職は墓の周りの掃除をしていた。
ちんちん家の墓の近くに居た。
なぜが俺が来ることが分かったかのように。
持ってきた握り飯をお地蔵様にお供えをして線香に火をつける。
空に上がる煙は何だか子供の魂が安心して旅立つような印象を受けた。
「なかなか気付かんでごめんね」
と心の中で思った。
お祈りとかお供えとかひととおり終わり、ふと顔を上げると住職がニコニコしながら俺を見ている。
そして懐かしむように話始めた。
「昔、君と同じことをした子のことを思い出してさ」
「えっ誰っすか」と俺。
「君の親父さんだよ」
ここからは後日談なのだが、親父も昔俺と同じ夢を見てたんだと。
同じように理由に気付き(もっとも親父のほうがだいぶ早かったらしいが…)俺と同じ行動をしたそうだ。
おかんはそのことを親父から聞いていたが、俺には黙っていた。
理由は…
「誰かに言われなくても自分からする優しい子になってほしいから」だそうだ。
早く聞いてればと思うのだが、まぁ気持は解るから文句は言わない。
そうそう、報告なのだがもうすぐ俺に子供が生まれる。
もしかしたら俺の子も同じ夢を見て不思議がるかも知れない。
その時は…
黙ってようと思う。
終
怖い話投稿:ホラーテラー ちんちんくさ男さん
作者怖話