短編2
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水子魂

私が高校生だった頃の話です。

私の通っていた高校は地元から少し遠く、電車で30分ばかりかかる町にありました。九州の小さな駅です。

通学時間は高校生でごった返します。進学校や女子高、工業高校などが固まって建っているので学生のいない時間はほとんどありません。

とある夏の日でした。私は部活の朝練に出る為に比較的早い時間に家を出ました。

その日はなんとなく具合が悪く、あんまりキツいようなら早引きしようと電車の中で思っていました。

駅についてホームへ向かう途中の事でした。

向かいからやってくる上級生らしい他校の女子。その下半身に何かがぶら下がっています。

なんだろう、そう思って目を凝らした私は後悔しました。

赤ん坊です。

青ざめた灰色の肉をした小さな赤ん坊が、女子生徒のお腹にしがみついていました。

水子だ、そう思いました。理由はありません。ですが、あれは間違いなくあの女子生徒の子供でした。

私は恐ろしくて前を通り過ぎる事ができませんでした。

赤ん坊は這うようにしてお腹の上でのたうっていました。

目を逸らしたい、そう思っているのですが、目が赤ん坊から離れません。私は赤ん坊と目が合うのだけは避けたいと思い、思いっきり瞼を閉じました。

女子生徒が近づいてくる。そして、そのまま横を通り過ぎると思った瞬間に気が緩みました。

「まま」

微かな声が耳に届きました。とても悲しい声でした。

振り返ると、赤ん坊の姿は消えていました。

中絶でもしたのでしょうか。水子は成仏させてあげないと、ああやってお母さんと一緒にいたがるのかも知れませんね。

あまり怖くない話ですいません。

怖い話投稿:ホラーテラー なんなしさん  

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