ある家庭が崩壊した。
祖父と祖母が相次いで急死し、
母親は酔払い運転に撥ねられ、
一人娘は変質者に絞殺され、
最後に残された父親は首を吊った。
誰もいなくなった家に、
整理をするために数人の親族が訪れた。
短期間のうちに住人を無くしたためか、
新築の家の中は閑散としているが、
どこか人の気配が残ったままだった。
個々の部屋を片付け、
残すはリビングだけとなった。
リビングには数点の絵画を始め、
主人のコレクションが残されていた。
整理の最中親族の一人が、
暖炉の上からコレクションを1つ落として、
壊してしまった。
それはマッチ棒や木の端材を、
寄せ集めて作られた細工であった。
床に落ちた細工から、
くすんだ木の破片が床に散乱した。
面倒だなとかがんだ親族の1人が、
妙なことに気づいた。
細工は小さな小屋の形をしていて、
砕けた拍子に中空になった内部が露になったのだが、
その内部が妙に黒い。
よく見ると散乱したパーツも、
細工の内側を向いていたと思われる部分は黒い。
何か文字が墨で書かれているようだが、
端材であるため切れており、
よく読めない。
もう1人の親族が、
ハッとしたように言った。
「お前これ、卒塔婆を切ったんやないか・・・?」
親族達は主人から聞かされていた。
見事なもんだろ、
友人が作ってくれたんだよ、
まあそいつは、経営難で自殺したけどね。
この家を建ててる頃だったから、
金は貸さなかったし・・・
暖炉の上にはまだ何個かの細工が、
静かに佇んでいる。
まさか、これらの中にも――――
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話