短編2
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しらせ

皆さん、お久しぶりです。

紅天狗です。

久しぶりにホラテラ来てみたら、相変わらずな感じで嬉しいです。

今日は俺の実体験じゃないのですが、同僚から聞いた話をひとつ。

同僚の知り合いに能力者がいる。

名前は佐々木さん。

この佐々木さん、幽霊が見えるとか、除霊が出来るとかの能力者ではない。

じゃあどんな能力かっていうと、所謂、予知夢を見たり虫のしらせで何となく悪い事が起こるのが分かるらしい。

で、今から10年近く前のある金曜日。

佐々木さんは朝目覚めてから、何か違和感と言うか嫌な感じがしたらしい。

でも仕事があるもんで、支度をして、朝食を取り、いつもの同じ時間に家を出た。

佐々木さんはバスと電車を使って会社に向かう。

田舎なもんで、15分発のバスに乗り遅れると電車に間に合わなくなる。

いつもの様にバス停に着き、バスを待っていると遠くに乗る予定のバスが見えた。

坂道を下ると自分の待つバス停。

いつもと変わらない風景。

赤とクリーム色のツートンのバス。

でもその日はなんだか靄がかかって見えた。

自分の前にバスが停まる。

他の乗客に続いてバスに乗り込む。

で、またここで嫌な感じがする。

朝目覚めて時より更に嫌な感じ。

一応席に座ったものの嫌な感じは変わらない。

自分が降りるバス停まで後、3つの時に嫌な感じが急に増した。

妙にソワソワする佐々木さん。

こんなのは、2年前に母親が事故で亡くなった時振りだ。

あの日の感覚に似ている。

「ビーッ。」

車内に降りますボタンの音が響く。

佐々木さんは衝動的にボタンを押し、会社に遅れる覚悟で次の停留所で降りる事にした。

冷や汗が止まらない。

「キーッ、プシュー。」

バス独特のブレーキ音をあげてバスが停まる。

佐々木さんは降りる時に乗客に万が一の事を伝えようか迷った。

しかし、信じてもらえないだろうし、頭のおかしい人だと蔑まれるのを恐れ何も言えなかった。

ただ、いつもはバスの運転手にありがとうとだけ言うのに、

「ありがとう。気を付けて。」

と、付け加えた。

小心者の佐々木さんに出来る唯一の配慮だ。

バスの事故の事は昼休みにケータイのニュースサイトで知った。

対向車線をはみ出して来た2tトラックを避けきれず、衝突、そして横転。

死者4名。

負傷者12名。

また嫌な予感が当たったと同時に助かった事に対する感謝の気持ちと、亡くなった方や怪我をした方に何も出来なかった罪悪感で複雑な心境だった。

最後にその話を佐々木さんが俺の同僚にしたわけだが、同僚のコメントに恐怖を感じた。

「あの時に、佐々木さんがバスを止めなければ、事故は防げたんじゃないのか?」

怖い話投稿:ホラーテラー 紅天狗さん  

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