短編2
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異生物

僕はとあるY梨県の食品会社で働いている。

うちの受発注システムは完全機械化されており、数百種類、数十万品の商品が顧客から自動的に受注され、また工場に発注される。

つまり、機械に不具合が起きれば基本的に人間には完全にはフォローしきれない規模だ。

ある日、そのシステムがダウンした。

パートさんや物流スタッフも総出で受発注室に駆け付けて処理を手伝ったが、結局間に合わず、多くの顧客に大迷惑をかけてしまい、経営や企業としての信頼関係に後々まで尾を引く大きなダメージとなった。

その日は営業と総務が全員ほぼ徹夜でアフターフォローに従事した。

顧客からの信頼も著しく損なってしまい、この事態の恐ろしさは、社会人の皆さんには分かっていただけると思う。

原因はすぐに判明した。

受注担当のパートさんの一人が、システムに触った際、致命的なエラーを起こしていたのに、放置して食事に行ってしまったのだ。

エラー自体は簡単に回復出来るものだったので、すぐに報告してくれれば確実に防げた。

総務課長がパートさん(大分ぽっちゃり四十代、二児の母)に事情を聞いた。

「なぜ報告してくれなかったんです?」

「だって私はお昼(御飯)だったんですよ(笑)。

報告なんてしてたら休み時間が減るじゃないですか(笑)。

そのぶんお金出るんですか?

私、この間本を読んだんです。

デキる人は時間を意識して働くって書いてあって。

私は皆さんと違って時間で動いてるんですよ(笑)。

そもそも、私がちょっと触ったくらいでどうにかなるシステムを使ってる方に問題は無いんですかあ?

ガードが甘いじゃないですか。

しっかりしてくださいよ。

そんなんじゃお客さんも不安になりますよ。

客商売でしょ?(笑)

コンプライアンスも最近厳しいんですよ、大丈夫ですか?(笑)(←多分コンプライアンスの意味分かってない)」

僕はたまたま隣の机だったのでやりとりが聞こえたのだが、彼女がまるで、自分とは違う、日本語を話す異生物に思えてゾッとした。

基本的な価値観に限れば、幽霊との方が分かりあえるんじゃないだろうか。

その後、僕の精神にオカルティックな変調が起こった。

続きます。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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