短編2
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我が子残念

昔々、山あいの村にツキという女が、幼い息子と娘と、三人で住んでいた。

亭主がいないものだから、ツキは飢えた子供達に頻繁に空き巣やスリをさせ、やっと糊口をしのいでいた。

子供達は周囲から同情の目で見られていたから、見逃されることもあったが、時には大人に捕まって折檻を受けた。

盗む、打たれる、飢える、また盗む…

村の寺の住職に息子が

「これ生き地獄。人間の生き方でない」

とこぼすこともよくあった。

ある時子供達が、折檻を受けた後、打ち処悪く自宅で寝込み、そのまま二人とも死んだ。

ツキはこの時になって子供達のことを大層悔やみ、都で昔流行ったという甦りのまじないを試すことにした。

人に見られずに山中に亡骸を埋め、合掌してひたすらに呪文を唱える。

「我が子残念。我が子残念」

丑三時を過ぎる頃、埋めた子供達が土中から起き上がった。

ツキは大喜びしたが、子供達はそのまま村へ走っていった。

後を追ってみると、子供達は自宅に火を放ち、村中に放火をして回りながら、

「ツキの子らが火をつけている、ツキの子らが火をつけている」

と自分らで叫んだ。

ツキが二人を捕まえてわけを聞くと、息子が答えた。

「あの世へ妹と行ってみたが、なにも無いばかりで怖くも痛くもない。

これならばこの世の方がずうっと辛い。

おれがあの世の長に頼んでお袋の寿命を三十三年後に伸ばしてもらったので、存分苦しんでからくたばれ」

言い終わると二人は山に戻り眠りについた。

ツキはこの火事の件で村八分になり、一層の飢えと気まぐれの折檻に毎日の様に見舞われた。

村から逃げようとすると、足が岩の様になって歩けない。

どんなに飢えても死なない。

体中の傷が化膿して腐り、激痛が止まず、酷い悪臭を放ち、ぼろ肉の様なざまで、狂うことも出来ず、それでもついに生き地獄を三十三年過ごした。

もう、もう、充分悔いた。

やっと、やっと終わる…。

安らかに眠りに付こうとした時、娘の声が聞こえた。

「じゃア次はあたしの分、

もう三十三年ネ」

怖い話投稿:ホラーテラー さわさん  

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