短編2
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バイトの話

俺が聞いた怖い話。

俺は居酒屋で働いていた事がある。そりゃまあ色々厳しい所だった。で、居酒屋じゃいろんな外国の留学生がバイトにいたが、その中で可愛い中国の女の子がいた。王ちゃんとしておく。王ちゃんは医者の娘で裕福な家庭の子だったらしいので、仕事は遅く、ピーク時には誰かがフォローしなけりゃならない仕事っぷりだったが、可愛いので皆喜んで手伝ったし、飲み会での彼女の隣は皆が座りたがった。俺の先輩なんかは常にその子にちょっかいを出しては他の女の子に怒られていたっけ。

でもその子が中国に帰る前に、一発やったらしい。なにをやったかはあえて言うまい。若い時にろくでもない男と遊ぶのも人生経験だ、と俺は思う。でも日本男児が全て先輩みたいな奴だと思われては凄く困る。

その王ちゃんが喋った話。王ちゃんのおじさんが体験したことだ。王ちゃんのおじさんのいとこは某軍事国家だ。日本にテ●ドンを撃ったあの国である。で、おじさんは月に一度トラックに物資を積んでいとこに持っていくんだそうだ。

そこの国の人はやっぱり痩せこけていて、物資が届かないと生きることも出来ないような酷い有様らしい。で、ある日おじさんがいつものようにいとこに会いに行くと、たまにはごはんを食べていってくれと言う。

おじさんは気にしなくていいから、と言ったがいつもいつも申し訳ないから、としつこく食い下がるのだ。だからおじさんはしぶしぶその日の夕飯をいとこの家族ととることにした。いとこの奥さんが夕飯の準備をするから、と言ってなぜか奥の部屋へと引っ込んだ。おじさんは不思議に思って後をついていく。そっと覗くといとこのおくさんの背丈ほどもある甕が、あった。

(なにが入っているんだろう)

奥さんはなにかの汁で漬けてある白いものをごそごそと取り出して、おじさんに気づかないまま部屋を出る。入れ違いにおじさんが入った。そして、甕の蓋を取って。

眩暈がした。

そこには、白い手首がごろん、と入っていた。

甕は大きかった。そしてどす黒い汁が縁一杯まで入っていたというから、「なにか」は相当入っていたに違いない。

おじさんが夕食を辞退したのは言うまでもなかった。

不思議と嫌悪感はなかったそうだ。そうでもしなくてはいけない理由は見れば解る。

そんな風に彼女は言った。

また、こんな話もしたことがある。近所に若い男と女がやってきて、住み始めた。女の人はがりがりに痩せていて、中国語が不自由だった。ある日男の人たちがやってきて女の人を連れて行ってしまったそうだ。

「私達、あの国の人と私達、違いが解るよ。だって、本当に痩せていて、可哀想なんだ」

これが本当の話かは解らない。でも、もしそうなら、俺は日本に生まれてきて良かったなあ、と思った。いや、マジで。

おわり

怖い話投稿:ホラーテラー 鉄砲さん  

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