中編4
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恐怖の大王の真相

恐怖の大王の話をしよう。

恐怖の大王が何かってのは、知ってる前提で話を進めるけど、

知らない人で、尚且つ知りたい人はググってほしい。

「ノストラダムスの予言」関連がヒットしたら、それが正解。

結論から言うと、恐怖の大王に起因する脅威は回避されている。

だから、もう心配いらない。

さて、どこから話したものか・・・。

まずは、恐怖の大王とは何だったのか解説しよう。

驚くなかれ、あれは「予言」なんかじゃ無かった。

簡単に言ってしまえば、あれは「呪」の一種。

時間をかけて基礎を築き、世紀末へ向け急速に力を増し、

神話級の災害を起こすだけの力を持ってしまった「呪」。

全ての要素がタイミング悪く重なり、

呪の力を高めちゃったんだろうね。

じゃあどうして、呪が強力になってしまったのか、

折角だから説明しておこう。

まずは予備知識として、

心霊現象の発生機序について知ってほしい。

死んだ後の霊魂によって起こされる?

もちろん違う。

脳の一部が損傷しただけで正常でいられなくなるのに、

脳の全部を失っておいて、意識がある訳がない。

心霊現象って言うのは、「縁」の余韻。

何かを原因として水面が波打ち、水面の葉が揺れる。

原因が消えた後も波紋は残り、葉は揺れ続けるように、

人と人との縁は、人が消えた後も記憶として残り、

その余韻は、まるで意思があるかのように振舞う。

生前の縁が多ければ多いほど、、

余韻は長く、強く、広く、深く影響する。

そこに原因となった人の意思は無い。

それが心霊現象。

じゃあ呪はっていうと、その逆。

原理が同じでも、その因果の方向が逆なのが呪。

何かを原因に水面の葉が揺れる逆。

葉が揺れることで、水面が波打ち、何かが起こる。

深く刻まれた縁が消えずに残るように、

想いの力で、存在しない縁が発生することがある。

それが呪。

呪の儀式ってのは、何も無い所に縁を作る儀式。

呪文や魔方陣は、所謂「演出」。

チベット密教の秘術「タルパ」は儀式として分かりやすい例。

触らぬ神に祟り無しって言うでしょ?

そりゃあ、知らなきゃ祟られようが無い。

で、話は戻るけど、恐怖の大王の呪ってのが凄かった。

昔の予言者が残した予言ってのが地盤を固め、

四行詩って形態が神秘性を高め、

世紀末ってタイミングが終末感を煽った。

何よりも、メディアの発達によって、

大勢が知ることになったってのがデカい。

多くの人間が深層心理で予言を畏れ、

七の月に向けて備えた。

もう、それだけの想いが1点に集中すれば、

恐怖の大王は来るべくして来るしかない状態。

不穏な空気を察知した人たちも、当然いた。

でも、ここまで強力になってしまった呪に対して

個人で出来ることなんて、まず無い。

メディアを使って、「予言の7の月は、本当は9月」とか、

「ノストラダムスの予言を信じているのは日本だけ」とか、

縁を弱めるために、想いを分散する手段が講じられたけど、

逆に知名度が上がって、呪を強めることになってしまった。

成す術も無く、関係者が途方に暮れている中、

世界を救ったのは東京に住む一人の主婦だった。

ここで、もう1つ予備知識を。

縁を強める儀式があるように、縁を弱める儀式も存在する。

縁を弱めるための媒体ってのもいくつかあるけど、

身近な所では「水」が結構有力だったりする。

水に対する「静」や「浄化」のイメージは世界共通で、

いろんな物を溶かす物性も、その要因なのかもしれない。

で、東京在住の主婦が何をやったか。

霊験あらたかな血筋の主婦が、伝説の神器を持って

その魂に秘めた霊力で、恐怖の大王と対決・・・なんて事は無い。

フィクションのように、天使と悪魔の壮絶な戦いなんて起こらない。

危機を救うのは、チョットしたアイディアだったりする。

覚えている人もいると思う。

90年代前半から急激に流行った「猫よけ」アイテム。

水を入れたペットボトルだ。

猫よけペットボトルのルーツは、60年以上昔のハワイだと言う。

元々は家の四隅に1本ずつ置くだけだとか。

恐らく4本のボトルだけでも、それなりの浄化作用があるのだろう。

それが日本では、各家庭でありったけのボトルを設置した。

庭をボトルで埋め尽くしていた家庭もあった。

はたして全国で、何本のボトルが設置されたのか計り知れない。

おかげで、恐怖の大王の縁は薄まり、

世紀末の脅威は去った。

が、しかし

今度は2012年マヤの予言。

世界規模の縁は、どうやら恐怖の大王より強いらしい。

頻発する天変地異は、その兆しなんだろうか。

怖い話投稿:ホラーテラー あの日人さん  

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