中編3
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 あれは、5月の初旬のことだった…。

 俺は整骨院へ向かっていた。なぜなら、整骨院には俺の憧れのあの子がいるからである。その子は俺が初めて一目惚れした人である。その子の名前は仮にSとしよう。Sは、骨折していて毎日のように通院していたので俺は毎日のように通った。

 Sの怪我も治りかけてきたので、俺はSをデートに誘った。Sは最初戸惑っていたが、了承してくれ、映画を見に行くことにした。しかし、聞くところによるとSは心霊スポットが好きなようなので、この辺で有名な心霊スポットに行くことにした。そこは漫画や小説にあるような荒れた廃ビルだった。

 いよいよ当日、5月の初旬だというのに辺りは暗く肌寒かった…。俺は若干びびってた、だがSの前では強がっていた。しかし今では、なんであんな場所に行ったのだろうと後悔している。Sは着くやいなや異常なテンションで俺はさらに恐怖感におそわれた。

 しかしSに後押しされ、いざビルの中に入った。ビルに入ると、外の外観より中は思ったより綺麗でまるで誰かがすんでいるように。しかし、一通り回ったが期待していたような(?)異常は無く、最後に地下へ行くことになった。地下に行くと気温がまるで10度以上違うようで、そのせいか、鳥肌がハンパかった。

 俺達はそれまでの雰囲気とは明らかに違うと感じ取ったせいか、俺達は無言で歩き続けた。俺はようやく1周したことに安堵し、1階へ戻る階段を登ろうとした。その瞬間、Sの様子が豹変し、その場を動こうとしない。俺は早く帰りたくてSに『早く階段登って帰ろうぜ』といった。そう言ってSの顏を覗き込むと、生気は失われ口からはボソボソと何かをつぶやいていた。俺は一気に寒気がした、そしてSは『かえらないで』とはっきり言ったように聞こえた。Sの名前を呼んでも反応はない、それどころか白目を剥きうめき声をあげて始めていた。俺は怖くなって逃げようとしたがSに腕を捕まれた。

 次の瞬間、Sはものすごい力で俺の腕に噛み付いた。泣きそうになった、しかも血の色じゃない液体が彼女の歯から出ていた。しかし所詮は女、やっとの思いで引き離し、全速力で出口に向かった。出口につき、俺の体はまるで10キロ全力疾走したような疲れがでた。ふとSが気になったが、姿は見つからない。俺はもうSのことを気にする余裕はなく、ましてやまたビルに戻る選択肢はなかった。

 俺はもう全てを幻だと思うように努めた、が腕の深い傷が現実だと物語った。傷あとは人間の噛んだあとではなく、牙のような、2つの大きな傷痕が目立っていた。もしかしたら最初からSは人間ではなく、俺をあちら側に引きずりこもうと計画していたのではないか、そんな考えが俺の脳裏をかすめた。俺は信じられず、ネットで調べてみたすると、そこには俺と同い年の女の子が以前腕に深い2つの傷とともに死んでいたらしい。

 時間も経ち、落ち着いてきた頃、俺はSについて聞こうと整骨院に向かったが、なぜかみんなSなど最初からいなかったかの様子だった。俺は、なぜかSのことが聞きたくなった、知りたかったのだろうか……歳をかなり取った院長にきいた。しかし案の定、Sなど知らないと言われたが、どこか違和感があるような言い方だった、がそれ以上詮索しないことにした。俺は用があってそのビルの前を通ることになった、そのとき傷が痛みだした。あの時のSのうめき声が聞こえた、ような気がした。

怖い話投稿:ホラーテラー 塩谷さん  

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