中編4
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白い壷

 半年前田舎の爺ちゃんが亡くなりました。爺ちゃんは骨董品が好きでした。良くガラクタ(笑)を見つけてきては愛でながら茶を啜っていたそうです。その度に古い物は倉にしまわれ倉はガラクタの山という事でした。

 爺ちゃんが亡くなり婆ちゃんが倉を整理するということで、うちの両親が手伝いに行きました。売却出来る物とガラクタと残す物で分けたそうです。そして夜に両親が帰って来ました。その時に父が重そうに持って帰って来たのが白い壷でした。

俺「…何それ」

父「良いだろ~要らないって言うから貰ってきた、リビングに置くぞ」

いやいや邪魔だろ…と思ったけど仕方なくリビングに運ぶのを手伝った。

ずっしりと重く冷たかった。その晩、父は壷を見ながら満足げに晩酌していました。

 夜中2階の自室で寝ていた俺はふと物音に気付きました。

タン…タン…タン…タン…

階段を登る音でした、寝ぼけ眼で時計を見ると2時、こんな時間に両親は上がって来ないので、妹だろうと思い寝てしまいました。

翌朝、夜中に帰って来たと思った妹の姿がないので、母に聞くと、大学の友達と旅行へ行っているとの事でした。

その時は寝ぼけて勘違いしたんだなぁと納得していました。

 その日の夜、仕事で遅くなり帰宅したのは夜中で、疲れもあってか、着替えもせずに自室でそのまま寝てしまいました。

タン…タン…タン…タン…

あれ?また…昨晩と同じような音に気付き目が覚めました。

タン…タン…

…ギー…

扉の音…

隣の妹の部屋か… 旅行から帰って来たのか。

一瞬目が覚めたものの俺は再び眠ってしまいました。

しかし翌朝、やはり妹が帰って来ている様子はなく、また母に妹の事を訪ねると、帰って来るのは明日という事でした。

…何だったんだろ。不思議でしたが、疲れてるのか?なんて思いながら仕事に行きました。

 その日仕事が早く終わったので夕方に帰宅する事が出来ました。

ゆっくり風呂に浸かり夕食を終え、次の日の仕事が普段より早い事もあったので10時にはベッドに入りました。

そして不安な夢を見ました…

自分が炎に巻かれる夢…木が…家が…人が…目に映るもの全てが燃えていました。

逃げばもなく体が焼けただれていく…叫び声…凄く苦しい…地獄のよう…ミズ…

あまりの悪夢に飛び起きました。心臓がバクバクいってる…凄い汗…時計を見るとまだ夜中の1時過ぎでした。

 悪夢のショックに呆然としていると、やたら喉が渇いている事に気付きました。

俺は下で何か飲もうと部屋を出て階段の電気を点けました、階段が少し汚いな…そんな事を思いつつ、キッチンに行き冷蔵庫からお茶を出しました。

 キッチンからはリビングが見渡せ何となく眺めながらお茶を飲んでいました。

…壷…暗闇でも壷の白色が浮いていたので、自然と視線が壷に向いていました。暗闇に目が慣れてきたせいか…ソファー…テレビ…時計…2時か…視線を再び壷に戻すと、まるで壷が微かに発光しているようにさえ感じました。

「………!!」

気付いてしまいました。

壷から頭が出てる…

こっちを見てる…。

いつから…

目の高さまででしたが、子供の様でした…

心臓がバックンと脈打って、一気に血の気が引きました。

明らかにおかしな視界に声も出せず、目もそらせませんでした。

頭の中は真っ白。

「どうした?」

はっとして、気付くと父がそばに立っていました。

トイレに起きたらしい。壷を見るとそこにはもう何もいませんでした。

父に訳を話すと笑っていましたが、俺があまりに真剣なんで、夜中でしたが壷を家の外に運び出しました。

 俺はその後、すっかりびびって一睡も出来ずに朝を迎えました。

そのまま仕事に向かい帰って来てから聞いたのですが、旅行から帰って来た妹が部屋に上がると床一面すすだらけで黒い足跡の様なものが沢山ついていたらしく、色々と大騒ぎだったとか。

 後日これらの事を婆ちゃんに詳しく電話すると、爺ちゃんの法事でもお世話になった坊様を連れて来て壷を持っていった。

坊様の話しだと、

「火に纏わる死を遂げた子供の無念や恐怖の念が残っとるんかもなぁ、火事やら何やらで逃げ場もなく、瓶代わりに使われとった水のはったこの壷に…とかなぁ、でも結局たすからんかったんやろなぁ…」

 その後婆ちゃんから聞いたところによると壷は供養され、寺に保管されているらしい。

 あれ以来うちでの不思議な現象は無くなった…でも俺はそれ以降壷が怖くて仕方ない…(汗)

 

怖い話投稿:ホラーテラー A.Sさん  

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