中編3
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キューピッドさん

小学生の頃、「キューピッドさん」という遊びが流行った。

コックリさんみたいなもので白い紙に平仮名50音字や数字を書いて、真ん中にはハートとYES、NOを書く。

私、仲良しのユカリ、ヨウコの3人も多分にもれず、しょっちゅうキューピッドさんを呼び出していた。

皆はどう思っていたか知らないが、私は内心、

「どうせ誰かが鉛筆を動かしてるんでしょ…。でも盛り上がって楽しいから、知らないフリしてよう……。」

と思っていた。

自分から鉛筆を動かすことはしなかった。

コックリさんと違ってキューピッドさんの場合、1本の鉛筆を2人の子が握り合い、『入口』に置いて、

「キューピッドさん、おいでましたらハートの所まで来て下さい」

と唱えるのだ。(私達の間ではそういうルールだった)

そうすると、鉛筆はズルズルとゆっくりハートまで行き、そこでまたこう聞くのである。

「アナタは天使ですか?」

ここで普通ならYESを丸で囲むのだが、たまにNOを囲まれてしまい、私達は慌てて、「失礼しました。お土産を持ってお帰り下さい」と正体不明の何かを出口に追いやるのだった。(紙の右下にはお土産コーナーが書いてある)

ある日、理科室で授業があった。

私とユカリ、ヨウコは同じ班で、休み時間の内に早めに理科室に乗り込み、飽きもせずキューピッドさんをやっていた。

その時は運悪く、なかなかキューピッドさんが降りてきてくれず、何度かやり直していたのだが、そのうち、

「お帰り下さい」

とお願いしても、鉛筆は出口に向かわず、NOの所をグルグル回り続けていた。

私達は「コワイよぉ〜」と半分本気、半分笑いでビビッていたが、もたもたしている間に先生が来てしまった為、正体不明さんを追い返せないまま、鉛筆を離してしまった。そして、使用していた紙を3人で3回ずつビリビリに破いて(終了時のルール)、

「大丈夫かな………」

とお互い顔を見合わせ、紙をゴミ箱に捨てた。

授業が始まった。

何の実験だったか、ビーカーや試験管を熱したりして途中までは楽しかった。

だが、その日に限って、私達の班は、たかだか50分足らずの授業の間に2本の試験管と1個のビーカーを割ってしまった……。私とユカリは手の指をさっくり切った。

実験の授業は時々あったし、用具だって不慣れだったわけではないのに…。

単なる偶然や、キューピッドさんに気を取られ過ぎたのだと言われればそれまでだが、不注意だけで、3つも割れるだろうか。

私はそれまで『キューピッドさん』自体、半信半疑だったのだが、一転、「もしかして……マジ…!?」

等と恐れを抱くようになった。

私達がこのことを機にキューピッドさんに懲りたのは言うまでもない……。

小学生以来、この遊びはしてないけれど、今でもキューピッドさんは子供達の間で遊ばれているのかなぁ。

久しぶりに

『キューピッドさん、おいでましたら…』

と唱えたら、大人なった今、鉛筆は動くのでしょうか……。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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