シュタシュタシュタと四つ足で走る人間に暗い夜道で追いかけられた恐怖が今でも忘れられない。
これは俺がとても恐いモノに出会ったという話でオチはない。
夜中の1時頃。
俺はレンタルビデオ店に行った帰りで、線路脇の細く、人影のない静かな道を歩いていた。
その道は街灯が50メートル程の間隔でしか設置していなく、街灯と街灯の間の真ん中辺りは明かりが届かずに真っ暗になっていた。
道を歩きながら、どうでもいいことを考え ていたと思う。
さっき見たテレビのこと。
次の日曜の予定。
借りたDVD面白いかな、とか。
ある街灯の下に来た時のこと、俺のいる街灯の、もう一つ先の街灯の下に何かがあった。
なんだアレ?
俺は別に何も考えずにソレを見ながら歩を進めた。
50メートル、40メートル、近付いていくと、ソレがハッキリと見えてきた。
人間?
黒髪で長髪の人間が街灯の下で四つん這いになっていた。
黒髪はめっちゃ長くて、地面にまで余裕で届いていて、四つん這いといってもかなり肘を曲げた状態だったので姿勢はかなり低く、膝を立てて土下座している感じ。
俺の視界にはそいつが真横から見えていた。
距離は30メートル位はあったはず。
まさか、幽霊?
一瞬、恐っと思ったがリアルに考えれば酒の飲み過ぎで吐いてる人か、体の具合が悪くて立てない人だろうと俺は考えた。
ってか、そいつは本当に具合悪い人で救急車とかが必要な可能性もゼロではないし、これは、『大丈夫ですか?』と声をかけた方がいいだろうなとか悩んでた。
そいつを視界に捕らえたまま20メートル、10メートルとそいつと俺との距離が近づいていく。
そいつは全然動かない。
俺は人として一応一声かける決意をしていた。
俺はもうそいつが幽霊的なもんかどうかの恐さより、『大丈夫だからほっといてよ、うぜぇな』とか言われたらどうしよって恐さのが全然強かった。
そんでそいつとの距離が5メートル位まで縮まった時、いきなりそいつは動いた。
俺に横腹を見せたまま、肘と膝伸ばし、犬のような格好になったんだ。
え、どゆこと?
一秒後何が起こるか想像も出来ないから、俺はその場に止まり、そいつを見ていた。
そしてそいつの次にとった行動で俺は一瞬で恐怖に落ちた。
今まで横を見せていたそいつが四つん這いのまま俺の方を向き、ダッシュで音もなく俺に近づいてきたんだ。
俺は速攻で逃げた、今来た道を逆に。
全力で走りながらチラッと後ろを見ると、長い黒髪のそいつが数メートル後ろをシュタシュタと犬のように追いかけてきていた。
なんで俺を追いかけてきてんの?
やばいやばい、アレ絶対やばいって!
伝わるかな?長い黒髪の女?に夜中四つ足で追いかけられる恐さ。
走っても走ってもついて来る。
捕まったら死ぬと思った。
もうとにかく必死で走ったよ俺は。
後ろをチラ見すると、逃げるスピードが落ちると思ったから振り返らずにとにかく人のいるところまで行こう!って。
多分人生で1番速く、1番長く走ったと思う。歩道橋を登り、チャリンコに乗ったオッサンとすれ違った所で俺は後ろを振り向いた。
かなり息切れしていたが、あいつがまだ追って来ていたらすぐに逃げれるように楽な姿勢は取らないようにして。
あいつはいなかった。
すれ違ったオッサンをずっと見ていたが、俺が登ってき階段を下りる時も、変なもんに出会ったリアクションを取ることもなく、チャリンコを押しながら歩道橋を下りきった。
俺は歩道橋の上から今来た道を確認したが、あいつはいなかった。
もしかして、俺が安心して歩道橋を下りた所にあいつが待ち構えていたりして…。
俺はそれから1時間位様子を見て、今登ってきた階段とは逆の階段から歩道橋を下り、なるべく明るい道を選びながら帰った。
それから数年、あいつは一度も見ていない。
ある時、漫画で都市伝説を扱ったものがあり、読んだ。
長い髪のストーカー女の薄気味悪い話だが、話の最後で見せる女の姿が俺の見たあいつとそっくりだった。四つん這いでまるで人間ではない動き。
俺の見たあれは何なんだろう?
化け物の類でなければ近所の悪ガキの質の悪いいたずらだ。
『夜中に四つん這いで追いかけられたらみんなビビんじゃね?』
『マジうける、おもろそうだからやろうぜ』 みたいな。
でも、人間が四つん這いであんな速く走れるかな…?
盛り上がりにかける話でゴメン。
読んでくれてありがとう。
でもこれマジだから似たようなの見た人いたら教えて。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話