中編3
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ある日の帰り道に

暗い夜道を歩いていた。

時計の針はもうすぐ深夜0時を指そうとしている。

残業ですっかり遅くなってしまった。

周りには頼りなく光る街灯があるだけ。

車を停めてある駐車場を目指して薄暗い道を歩いた。

駐車場が見えた。

疲れていた俺はホッとした。

駐車場に入り、車に乗り込む。

駐車場は先ほど歩いていた道よりも遥かに暗い。

しばらくはエンジンをかけずに、身体を休めた。

恐ろしく静かだ。

こんなに遅くなるのが初めてだからそう感じるのだろう。

その時だった。

コツ・・・コツ・・・

埃が落ちる音さえ聞こえてきそうな空間に、小さな音が響く。

ドアのガラスを叩く音だ。

そう思った俺は、音のした方向を振り向いた。

驚いた。

小さな女の子が立っている。

俺は車から降りて女の子に話しかけた。

「君、なんでこんな時間に外にいるの?危ないよ。」

暗さで女の子の白い顔以外よく見えない。

女の子が口を開く。

「・・・私・・・お母さんに置いて行かれちゃった・・・」

置いて行かれた?

捨てられたのか?

「そうなんだ?お家はどこ?名前は?送って行ってあげるよ。」

「・・・とっても遠いの・・・だからわからない・・・それに私はまだここにいるの・・・」

名前を言ってくれた。

女の子はずいぶん遠くから来ているようだ。

これでは家はわかりそうにない。

それにここにまだいたいと言っている。

お母さんが迎えに来るのを待つつもりだろうか。

「よしわかった。お巡りさん呼んであげるからもう少し我慢するんだよ。」

俺は警察に連絡した。

10分ほどで来るそうだ。

電話を切る。

「もう大丈・・・夫・・あれ?」

女の子がいない。

さっきまで確かにいたはず。

電話していて、女の子から目を離している間に消えていた。

探し回ったが見つからない。

俺はわけがわからなかった。

警察が到着。

なんと言い訳したらいいのか。

恥ずかしがりながら、警察に事情を話す。

警察は相手にもしない。

女の子の名前を言おうかと思ったが、こんな状況では何を言っても同じだ。

名前は言わない事に。

警察は帰って行った。

俺も帰る事に。

翌日。

夜のニュースを見ていて俺は驚いた。

昨日の駐車場で、小さな女の子の遺体が発見されたのだ。

遺体は駐車場の隅にある溝から発見され、その身体は鋭利な刃物で数カ所刺されていたという。

遺体の状態から、死亡したのは3日ほど前だという。

警察は殺人事件として犯人を追っている。

女の子の両親とも連絡が取れない事から警察は、両親も関与していると見て捜査しているという。

昨日の夕方に溝の掃除に来ていた人が、遺体などなかったと証言している事から、警察はそれ以降の時間に遺棄された可能性が高いと見ているようだ。

女の子の名前が公開された。

俺は思わず「あ!」と口にした。

昨日の女の子の名前だ。

警察が、女の子の衣服に書いてあった名前から身元を割り出したとニュースは伝える。

俺はしばらく固まっていた。

信じられないという気持ちが俺を襲う。

まさかあの子が。

「・・・私・・・お母さんに置いて行かれちゃった・・・」

俺は嫌な予感がした。

もしかしたら母親が女の子を殺したのかもしれない。

そして俺はある事に気が付く。

3日前に死亡していたのなら、俺が見た女の子はいったいなんだったのか?

恐怖が湧き上がってくる。

そんな事は考えたくない。

俺は気分転換にドライブにでも行こうと、車に向かう。

車のドアのガラスを見た時、俺はゾッとした。

昨日、女の子が叩いたガラスに血が手形についていのだ。

この血が、俺と会った時女の子は既に死んでいたという裏付けになった。

じゃあ俺が見た女の子はいったい・・・

そして女の子が言っていた言葉を思い出した。

「・・・私はまだここにいるの・・・」

俺は女の子が、まだここにいたいと言っているのだと思っていたが違う。

自分の死体が「まだここにいるの」と伝えたかったのだろう。

死体ではない何かが動き、俺に伝えようとしていたのかもしれない。

あの溝の中にいる事を・・・

怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん  

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