中編3
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なつのおわり。

ある日。

残業帰りで薄昏い道を歩いて帰っていた時の事です。

ふいに、上から何かが落ちてきて、私の頭に当たりました。

咄嗟の事だったので避けることも無く、その落下物に頭を打たれた私は

少しムッとしながら私の頭に一撃を下した物の正体を見届けるべく

視線を足元に移しました。

手袋です。日焼けを嫌う女性が着ける、あの肘まであるような長い手袋です。

・・・手袋の他にアレに何か名前があるのならば、きっとソレです。

私がムッとしたのは、手袋が頭に当たったからでは決してありません。

そんな些細な事で怒っていたら堪忍袋がもちません。

違和感の元を探るべく、その手袋をつまみあげ、逆さに振ってみました。

ぼたり

中から落ちたのは手首から千切れた細い指の白い手でした。

薬指には恐らくエンゲージリング。

これはこれは。妙なモノを拾いました。

私は冷たく固まった手首を拾い上げ、手袋の中に押し込みました。

赤い赤いマニキュアの長い爪が邪魔だったので無理矢理剥がそうとすると

あっさり取れてしまいました。着け爪だったようです。

その手袋を私は近くの街路樹の植え込みへ投げ入れました。

往来の小石は道の端に除けるのがマナーです。誰かが躓いてはいけませんからね。

次の日。

またしても残業帰りで同じような時間に同じ道を歩いて帰っていた時の事です。

ふいに、上から何かが落ちてきて、私の頭に当たりました。

咄嗟の事だったので避けることも無く、その落下物に頭を打たれた私は

少しムッとしながら私の頭に一撃を下した物の正体を見届けるべく

視線を足元に移しました。

編上靴です。野外を歩くわけでもない女性が履く、あの妙に踵の高い編上靴です。

・・・編上靴という呼び方に何か意見のある方はブーツと読んで頂いて結構です。

私がムッとしたのは、編上靴が頭に当たったからでは決してありません。

そんな些細な事で怒っていたら堪忍袋がもちません。

違和感の元を探るべく、その編上靴をつまみあげ、逆さに振ってみました。

ぼたり

中から落ちたのは千切れた細い脛の白い脚でした。

それぞれの指には薄桃色のペディキュア。

これはこれは。妙なモノを拾いました。

私は冷たく固まった足を拾い上げ、編上靴の中に押し込みました。

固く固く硬直した足首が邪魔だったので無理矢理曲げると

変な方向に折れてしまいました。骨粗鬆症だったのでしょうか。

その編上靴を私は近くの街路樹の植え込みへ投げ入れました。

往来の小石は道の端に除けるのがマナーです。誰かが躓いてはいけませんからね。

次の日。

またしても残業帰りで同じような時間に同じ道を歩いて帰っていた時の事です。

上から何かが落ちてきて、私の頭に当たるような気がしたので立ち止まりました。

咄嗟の事でしたが避けることは造作も無く、その落下物が地面に激突するのを

それとなく見届けました。

ぐちゃり

足を止めた私の鼻先を通過して

足元に首が落下しました。

私は一歩引いて様子を窺います。

髪型は黒のショートボブ。

化粧の薄い肌の白さに花柄をあしらった髪留めのピンが印象的です。

地平面に半分がめり込みアスファルトに張り付いた崩れた顔で

飛び出した片方の目玉が一人前に私を睨みつけています。

外れた顎で奥歯を擦り合わせ声を絞り出すように女は呟きました。

『・・・どうシて助ケてくれナいの?』

なかなか可愛い声で鳴くじゃないか。

私は彼女の問いに答えます。

「努力が足りないね。 ・・・そして」

私は短い髪の女の首を 街路樹の植え込みへ蹴飛ばしました。

「相手が悪かったな。」

何せ勤務時間外ですから。

誰か もし手や足や首の千切れた哀れな壊死体を見かけたら

その時は見て見ぬフリしないで通報してあげて下さい。

私は忙しいのでこれにて失礼します。

それでは ごきげんよう。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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