中編5
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夢のお面屋

小さな頃に、よく同じ夢を見ました。

その夢は、何か怖い夢を見て、一度目覚めた後に、

再び眠りにつくと見る夢でした。

その夢の内容はこんな感じです。

夏の夜に、近くにあるお寺の境内でお祭りをしており、

そこに私が一人でいます。

やぐらが立ち、盆踊りをし、夜店がでて、とても

にぎやかな感じですが、境内の隅の、薄暗く、人気の

ない通路に不思議なお面屋がありました。

普通のお面屋だったら、仮面ライダーやウルトラマン、

プリキュア等の子供に人気のあるキャラクターものが

置かれてあるのですが、そのお面屋は、ボコボコに腫れた

人の顔や、白目を向いてうなだれている女性の顔など

ホラー映画に出てきそうな気持ちの悪いお面だけを

売っているのです。

夢の中の私は、特に怖がることもなく、そのお面をじっと

見つめ、そして目が覚める。ただ、それだけの夢でした。

大きくなるにつれ、その夢をだんだん見なくなり、中学生

になる頃には、まったくその夢を見なくなっていました。

3年ほどして、一緒に住んでいた祖母が他界しました。

90歳近い年齢で、死因も老衰でした。大往生だったと

思います。

両親が共働きだった私は、おばあちゃん子だった為、とても

悲しかったのですが、涙は出ませんでした。いつでもすぐ

傍にいる気がして・・・。

祖母が他界した夜に、祖母が夢枕に立ちました。ただの夢

だったのかも知れませんが、祖母は「お面には気を付ける

んだよ」と言って消えてしまいました。

そして、次の日から、またあの〝夢〟を見るようになりました。

その日、いつもの様に床に就くと、すぐに夢を見ました。

通学途中、駐車場から飛び出してくる車に撥ねられそうになり、

自転車ごと転ぶ夢で、転んだところで目が覚めました。

時計を見ると夜中の2時少し前。私は再び眠りに就きました。

気が付くと、高校生になった私が、あの懐かしいお寺のお祭りに

来ています。あの時と変わらず、盆踊りをし、夜店が出て

にぎやかな感じです。

そして、人気のない通路の方には、あの時と同じように不思議な

お面屋が出ていました。

夢の中の私は、そのお面屋の前で足を止めると、そこにある

たくさんの不気味なお面を眺めはじめました。

ふと気が付くと、隅の方に小さなお面が3つありました。他の

お面と同じように、青紫色の腫れがあったり、口から血が出て

いたり、顔の1/5位が欠けていたりと不気味なお面でしたが

他のお面の半分位の大きさでした。

その時、すぐ隣で人の気配がして振り向くと、うつろな目をした

無表情の男の人が立っていました。40代半ば位でしょうか。

その男の人は、かけてある不気味なお面をひとつひとつ物色すると

ひとつのお面を手に取り、「あった」と一言つぶやいて、その

お面を被りました。

そして、境内のさらに奥の真っ暗な細い道へと消えて行きました。

そこで、目覚まし時計が鳴り、目が覚めました。

久しぶりにあの夢を見たな~、とけだるい感じでいつものように

自転車で学校へ向かいました。

途中、県庁の駐車場に隣接する道を走っていると、駐車場から

急に車が飛び出して来ました。

キキキーッと大きな音が鳴り響き、私は寸でのところで衝突を

避けることが出来ました。

なんとなく、嫌な予感がしていました。夢で見た光景と同じじゃ

なかったら、避けられなかったと思います。

車からは50代くらいのサラリーマンが降りてきて、「大丈夫ですか?

すみませんでした。」と申し訳なさそうに謝っていました。

私は特に怪我もなかったので、その場を後にしました。

その日もいつも通り授業を終え、家に帰り、夕飯のあとテレビを見て

いました。バラエティー番組を見ていると、次の番組との間にある

短いニュースが流れて来ました。

私の家からそれほど遠くない山道で、大型重機のブレーキが故障し

下校途中の子供の列に突っ込んだと言うニュースでした。

2人が死亡、1人が意識不明の重体、1人が重傷との内容で、高校生

ながら、胸が詰まる思いでした。

その日は朝から、夢を見たり、事故に合いそうになったり、悲しい

ニュースがあったりと、なんだか疲れてしまい、いつもより早く床

に就きました。

その日も、また夢を見ました。

夢の中で私は車の助手席に乗っていて、坂道を加速しながら降りて

行きます。運転席にはだれも乗っておらず、坂道を下りきった所に

あるガードレールにぶつかる瞬間に目が覚めました。

時計を見ると夜中の2時少し前。またかと思いながら、再び眠りに

就きました。

気が付くと、またあのお寺の境内の中、不思議なお面屋の前に

いました。

夢の中の私は、そのお面屋の前で足を止めると、また、そこにある

たくさんの不気味なお面を眺めはじめました。

ふと気が付くと、隣に3人の子供がおり、隅にあったお面を見つけて

「あった、あった。」と手に取りお面を被りました。

そして、昨日の夢に出てきた男と同じように、境内のさらに

奥の真っ暗な細い道へと消えて行きました。

私は夢の中で、「そろそろ目が覚める時間だな」と思っていると

今まで一度も口の利いたことのないお面屋の店主が、「おまえの

お面もあるよ」とぽつりとつぶやきました。

夢の中の私はたくさんの不思議なお面を再び眺め始めました。

すると、どれも同じように不気味な顔のお面なのに、なぜか一つの

お面だけは〝私の顔〟だと言う事がすぐに分かりました。

紫色にはれ上がったおでこ、片方の目は飛び出し、顎が変な方向に

曲がったその顔は、まぎれもなく私の顔でした。

夢の中の私は、ゆっくりとそのお面を手に取り、被ろうとしました。

その時、夢枕に立った祖母の言葉が頭をよぎりました。

「お面には気を付けるんだよ」

私は、そのお面を元の場所に戻し、寺の境内を後にしました。

お寺から出たときに、道路の向かい側に、一瞬祖母が立っている様に

見えました。

その日はそこで目が覚めました。道路向かいにいた祖母は、笑顔で

ゆっくりと頷いている様に見えました。

朝、朝食をとりながらニュースを見ていると、先日の大型重機の

事故で、意識不明の重体だった子がなくなったと伝えていました。

それから、お面屋の夢は見なくなりました。

あのお面屋は何だったのか、亡くなった方たちと、お面屋に来ていた

お客と関係があるのか無いのか分かりませんが、私にはあのお面屋

が死の世界への入口に何か関係している様に思えてなりません。

おわり

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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