短編2
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携帯カメラ

毎晩寝苦しさを感じていた。

働き出して実家を出るまでは、

夜ベットに入ったら即睡眠。

朝まで目覚めることは無かったのだが、

都内で一人暮らしを始めてから、

何かと寝付きが悪かった。

最近上に越してきた外国人が、

深夜過ぎてもやたら煩いからかなぁなんて理由をつけて、

あまり悩まないようにしていたが、

朝になってもけだるさが残る毎日を過ごしていた。

ある蒸し暑い晩、ふと目が覚めた。

かれこれ1週間程前から、

深夜3時〜4時の間に目覚めてしまうことが続いていた。

いつもなら目覚まし確認、

二度寝の作業になるのだが、

その日は何か違和感があった。

枕元に置いてある携帯電話。

充電中は赤いLEDがついている。

メールや着信があれば、

ランプの色が緑で点滅するタイプなのだが、

大概2時間で充電は完了するので、

この時間はランプがついていないことが多い。

でも違う。

ランプはついていないが、

サブディスプレイのイルミネーションがついている。

触った覚えは無いけど、なんだろ?と、

何の気無しに充電コードをたぐり寄せケータイを開いた。

真っ暗闇に慣れていた視界に眩しい、

いつもの待受画面

では無かった。

どちらかと言えば暗い。

寝ぼけた頭で、なんだろうと考えた。

瞬間、頭がスッと冴え、背筋が凍った。

携帯を持つ手からも血の気が引くのを感じた。

「私」が写っている。

顔だけで無く、全身。

まるで天井から撮ったかのような視点。

寝ぼけて写真を撮ったと言うのは有り得ない。

写真には私の両腕がキチンと写っていたから。

恐ろしくなった私は、

そのまま電源ボタンを連打していた。

一瞬、保存しますか?というアラートが見えた。

それから部屋中の電気をつけて、押し入れや物陰、

戸締まりをくまなくチェックして朝まで震えて過ごした。

次の日から、必要な物をまとめて友達の家に転がり込んだ。

寝言みたいな私の話を信じて、ルームシェアまで提案してくれた。

とてつもなく有り難い話だったが、やっぱり申し訳ない。

するとその子が、その写真を見たいと言ってきた。

見たいも何も、消してしまったから残っていないよと言いながら、

データフォルダを開いた途端に、2人まとめて凍った。

サムネイル画面いっぱいに、

何枚も何枚も真っ暗な写真が並んでいた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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