短編2
  • 表示切替
  • 使い方

送り先は忌中の家

つい先日 仲間数人と地元の街である集まりがあった。お酒を飲む者、食事のみの者、各自それぞれのスタイルで楽しい時間を過ごした。

深夜1時くらいに解散となり、私は食事のみだったので自ら車を運転し帰路についた。私の住まいは地元の繁華街からは少し距離があり、途中ちょっとした峠道を越える。

その峠道に入り少し走ったところで、道路の右側に女性がしゃがみ込んでいるのが見えた。その女性は何となく具合が悪そうな感じだったので、私は車を停め声をかけた。

私『こんばんは、どうかされましたか?』

女性『あっ…こんばんは…』

私『もし何かお困りなら、お手伝いしますよ』

女性『ありがとうございます…申し訳ありませんが、○○食堂の前まで送って貰えないでしょうか?』

その食堂とは私の帰る方向の通り道に面した食堂だったので了解した。女性は私の車に乗り込む際に、車の前方を通り助手席側の後部座席へ回った。

その時ヘッドライトに照らされた女性の足元が見えたのだが、なんとワラジを履いていた。私は一瞬『えっ?』と思ったが、そのまま女性を後部座席に乗せ走り出した。

私はハンドルを握る手にうっすら汗をかき、背中に寒気を感じていたが黙っているのも変かと思い女性に話しかけた。

私『しかしこんな時間に、あんな場所にしゃがみ込んでたのでビックリしましたよ!』私は無理に明るく話しかけてみた。

女性『…』

私『ワラジ履いてるなんて、珍しいですね?!』

女性『…』

何も応えない…。

どうやら窓に額を押し当て、外を眺めているようだ…。

私は不意に気付いたのだが『そう言えば、話しかけた時から顔は髪の毛で隠れていて見えてないなぁ』そんな事を考えていた。

きっと何か嫌な事でもあったのだろうと思い、私は黙って運転を続けた。 そうこうする内に○○食堂の看板が見えて来た。

私は『あの看板のところですね』と言いながら、女性をルームミラーで確認した。女性は小さく頷いたように見えた。

そして○○食堂の前に車を停め『はい、着きましたよ』と後ろを振り向いたら、女性の姿は消えていました。

私の嫌な予感は的中しました。なんと○○食堂の路地を入ったすぐの所の家が、お通夜だったのです。

私はゾッとしたと同時に『やっぱりな…』と妙に冷静な自分が居ましたが、身体中の冷えきった感覚が消えず家に帰ってからも眠れませんでした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ