中編4
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貧乏神

高校からの同級生のKと居酒屋で飲んでいた。Kが突然こんな事を言った。

K「お前さあ、貧乏神っていると思うか?」

俺「そりゃあいるでしょ。だって俺んち貧乏神いそうだし。 」

K「いや、そうじゃなくて。実は、昨日ある人から俺に貧乏神が憑いてるって言われたんだよ…」

俺はKのウケ狙いだと思って思いっきり笑ってやったが、違うんだ。

どうやらKはそうとう気にしているようだ。

そもそも《貧乏神》なんて本当にいるのだろうか? イメージとしては物語とかに出てくる汚い衣を着た痩せこけた爺さんって感じか。

Kの仕事の現場に応援に来ていたAさんと3日ほど一緒に仕事して、昨日Aさんは帰って行ったのだが、別れ際にKはAさんからこんな事を言われたそうだ。

A「 言おうかどうか迷っていたんだけど、俺さ… ごくたまに〈見る〉事があるんだ。」

Aさんは両手を幽霊のように垂らした。

K「 Aさん霊感あるんですか!?」

A「多分な…。でも俺には見えるものの中で一つだけそれがどんな存在なのかが分かる奴がいるんだ。 何度か見た事があるが間違いない。

言いにくい事だが…K君みすぼらしくて小さな男を背中に背負っているよ。 そいつは俗にいう

《貧乏神》だ。 」

Kは何て言葉を返していいか分からず固まってしまった。 Aさんはさらに続ける。

A「信じられないと思うが、実はK君と初めて会った時から見えていたんだ。 《貧乏神》は本当にいるんだよ。 それにそいつはどこにでも存在するし、憑かれたら文字通り金回りが悪くなってしまう。 そいつがどういう風に人や家を選ぶのかは分からないが、追い出す事は出来ると思う。」

にわかには信じられない話だが、Kにはそれが冗談だと思えないくらい思い当たる節があった。 そしてその話を聞かされた俺も妙に納得出来るのはKやKの家の〈あの状態〉を見たからかも知れない…

Kとは高校からの友人である。 同じクラスになったのがきっかけだった。Kは明るくておおらかなのだが、酷くだらしないというのが欠点だった。 頭はよくフケを飛ばし、どうやら歯磨きなんかもしてないようで目を逸らしたくなるくらい歯が汚かった。 その頃なんてどんな奴でも異性が気になるお年頃。

男だっていろいろ気を使うものだ。

当然女子からは嫌われた。 顔はなかなかのイケメンなのに…

そんなKだが、男の友達は多かった。

そして俺は社会人になって初めてKの家に行ったのだが、 玄関の扉を開けると凄まじい光景が広がっていた。

靴の散乱する玄関をスタートして廊下や床全て物かゴミで埋め尽くされている。 尻込みしている俺をよそにKはいたって普通に自分の部屋に案内する。 台所は一層酷くてシンクは茶碗や鍋がそのままにしてあった。 どこをどうすればこんな惨状になるのか。

Kの部屋のゴミを押しのけ座ってみるが落ち着かない。 まるで自分もゴミに見えてくる。

断っておくが、Kはここで両親と姉の4人で生活しているのだ。

そうなのだ、Kのだらしなさは環境だったんだ!

それだけじゃない。家族が全員だらしないってだけじゃない。

父親は仕事を長い事干され、母親は家のことせずパチンコ通い。そして借金までこしらえた。払えないとKが変わりに肩代わりする。 姉はいい年なのに嫁にも行かず仕事もせず、もちろん家事もしない。やや引きこもり状態。 唯一の稼ぎ頭のKもだいぶ参っていたらしい。 これは最近知った事なのだが。

Kから《貧乏神》の事を聞かされたその1ヶ月後、Kから連絡があって家に遊びに来るように誘われた。 俺は行きたくなかったが、あのゴミ屋敷がどうなっているのか気になったので、もう一度突撃することにした。

久しぶりのK宅。

家の前まで来ると何だか雰囲気が違う。いろんな物が乱雑に置いてあったのだが、無い。

そしてチャイムを鳴らし玄関の扉を開けると…(ナニコレ珍百景のあの音楽が頭の中で流れている)

そこには信じられない光景が!

家の中 超綺麗。 ゴミやガラクタはスッキリ処分され、ピシッと整理整頓されている。 そこへ小綺麗で爽やかなイケメンKが現れた。

K「いやー大変だったよ。実はあの時Aさんから貧乏神を追い出す方法がこれだったんだよ。 きっと家の中も貧乏神が好む環境になっているはずだって。 でもやっているうちにキレイに掃除する事が楽しくなってな。 そしたら家族も一緒にやってくれるようになってさ。 そんで俺自身も清潔を心がけるようになったんだ。 Aさんが教えてくれなきゃ絶対掃除なんてやってねーよ。」

だらしない性格は何も貧乏神のせいじゃないが… ともあれKの変身ぶりには驚いた。 Kの家ではいい事もあったそうで、見事《貧乏神》を追い出せたのだろう。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名ねりけしさん  

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