短編2
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妹の寝言

ボクの妹は、寝相が悪い。親戚のお姉ちゃんちでベッドを借りて寝た時なんか、柵が付いているのにもかかわらず、朝には床で寝ていたりする。

それに寝言も凄い。明らかに誰かに話しかけるような、ハッキリした寝言を言う。たまに夜中それを聞いてしまった時には、何かに憑かれてるんじゃないかと感じ、気持ちが悪くなる。

ボクはそんな妹と一緒の部屋で、布団を並べて寝ている。狭い団地住まいの、悲しい現実だ。

ある夜ボクは夢を見た。いろんな色がぐるぐる渦巻いて、頭ン中に広がっていく。そしてキーンとかん高い音が鳴り響く。

その中で、かすかに聞こえる人の声。

「  で」

少しずつ、ハッキリと聞こえてきた。それは女の人の声。

「  で……   で……  ぃで……」 

ハッと目が覚める。

「夢か」

ボクは少しほっとして、妹の方を見る。薄明かりの中、妹は安らかな寝息を立てて熟睡している。そのノンキな姿がうらやましくて、ジロジロと眺めていた。

その時、変なモノが眼に入る。妹の布団のシワが、ユラユラ揺れている。

よく見るとそれは、唇の形をしていた。ユラユラ動いて、言葉を発しているみたいだ。ボクは何だかそれから、目が離せなくなった。

「ぃで……  いで…… お・い・で」

ボクを呼んでいるのか? そう思った瞬間、布団の上に白いモヤが一筋現れた。

それは、ふわり、ふわりとボクに手招きをした。

ボクの意識は遠のいていく。そして手招きに誘われるように、そいつに近づいた。そいつはニヤリと笑うと、大きく口を開けた。

口の中には、暗い、暗い空間が広がっている。暗い、暗い……

ガバッ

突然妹が体を起こした。私の方に顔を向けると、白目をむいてハッキリこう言った。

「にいちゃん、肉まん食べたい」

それだけ告げて、パタリと倒れ込むと、再び寝息を立てた。

まわりの妖しい空気はすっかり無くなっていた。布団は無残にもはだけて、グチャっとなっている。ボクも安心からかドッと疲れを感じて、横になるとすぐに眠りに落ちた。

次の日の学校帰り、季節外れの肉まんを買いに走ったのは、言うまでもない。

怖い話投稿:ホラーテラー いっかみさん  

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