私はいつの間にか部屋に立っていた
その部屋には黒い棺桶が置いてあった、他には何もない。
暗い部屋の真ん中にある棺桶の上に、一人の男が座っていた。
「こんにちは」
彼は私に言う、笑っていた。「こんにちは」、私も彼に言う、私の表情はわからない。
私が立ち続けていると、男の後ろに白い布が舞い降りた、
闇の中、その布は淡い光に包まていた。
「遅れてしまいました」
白い布が言った。それは、白く大きな布を被った人間だった。
目に当たるところが丸く切り取られ、黒い瞳が私を見ている。
中にいるのは少女のようだった、声で解った、
男が低い声で笑った
「発表会はまだ始まっていません」男は棺桶の上から動かない、
「まだ時間はあります」
発表会、
私は思い出そうとする、私はここで何を発表するのだろう、焦る、思い出せない、
「時間はあるのです」
男は言う。私に微笑んでいる、白いお化けの少女は楽しそうに舞っていた、
「待ちましょう、あなたが思い出すまで」
少女は言う、私は黒い棺桶を見つめた、
一つだけ、私は目的を覚えていた、
私の居場所は棺桶の中だった、
私はそこから出て、再びそこに戻るため帰ってきたのだ、棺桶には男が腰掛けている、彼が立ち退かないと、私はそこに入れない。
発表会に参加する資格が無いのだ、
男は低い声で歌い始めた、
白い布の舞に合わせるように、
彼が立ち退かないと、私はそこに入れない。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話