これは私が数年前に叔父さんの家に泊まっていた時に経験した事です。
数年前、まだ私が10代だった頃に母方の実家で、現在は叔父さんが一人で暮らしている家に泊まった時のことです。
一階の広間で私たち家族は布団を敷いて寝ており、叔父さんは2階の自室で寝ていました。
そんな感じで寝ていると、私は夜遅くにトイレの為に目を覚ましました。
そして私は眠たい目を擦りつつ、広間の襖の入り口ではなく、常に開けている廊下に繋がる扉から廊下を歩いてトイレに向かいました。
ちなみにこの廊下は板張りで人が歩くとペタペタと音が響くので、家族を起こさないようになるべく音を立てずに歩いて行きました。
この家のトイレは男性用の小便器と和式トイレを中の扉で区切っている構造でした。
それで私はトイレに着くと外扉をパタンと閉めて、小便器で用を足し終えると再び外扉をパタンと閉めてから、洗面所で手を洗って布団に戻りました。
そして再び眠りにつこうと目を閉じた時のことです。
トイレのほうから『パタン…』という音が響いてきました。
私は家族の誰かがトイレに入ったんだろうと思いました。
それで気にせずまた目を閉じて眠ろうとしました。
だけどふと思ったんです…。トイレから戻ってきたとき家族は全員寝ていました。
もし叔父さんがトイレに入ったのなら階段を下りてくる音がするはずなんです。
だけど、そういう音は全くしませんでした。
あれ?おかしいなと一人考えていると、『ペタペタペタ…』と誰かが廊下を歩いてくる音が聞こえました。
なんだ私が叔父さんが和式のほうに入ってたのを気づかなかっただけか。と安心していると『ペタペタペタ…』という足音は、手を洗うはずの洗面所の辺りを通り過ぎて何故か私達が寝ている広間の近くに近づいてきました。
そして『ペタペタペタ』という音が広間の前で止まりました。
その足音が気になっていた私は目を開けると頭だけを持ち上げて襖の方を見ました。
ですが、襖は閉まっており家族もぐっすりと寝ている感じでした。
あれ、おかしいな?気のせいだったのかとふと常に開いているドアのほうに視線を移した途端、私は恐怖で凍りつきました。
何故ならドアの前に真っ暗なかでもハッキリと分かるほどに真っ黒な髪を腰の辺りまで伸ばして、白い着物を着た女性が立っていたんです。顔は前髪に隠れてよくは見えません。
私は恐怖のあまり家族を起こそうと必死になって声を搾り出そうとしますが、全く声が出せません。
それどころか頭以外は動かすことが出来ませんでした。
恐怖で私の頭の中がパニックになっている間も着物の女性は、ただこちらの方を向いているだけで広間のほうに入ってこようとはしません。
私はもうパニックと恐怖で着物の女性を直視することが出来ず、目を閉じて必死に心のなかでお経を唱えていました。どれくらいの間唱えていたか分かりませんが気がつくと朝になっていました。
すぐに家族や叔父さんに話をしましたが夢でも見てたんだろう?ということで誰も信じてはくれませんでした。
だけど夜中にトイレに起きたのは確実に覚えていますし、戻って布団に入ってすぐだったので夢だとは思えないんです…。
それに一番怖いのは、トイレの閉まる音『パタン』という音が1回しか聞こえなかった事です…あの時、私が小便器で用を足していたときには、すでに着物を着た女性は…
怖い話投稿:ホラーテラー SAさん
作者怖話