短編2
  • 表示切替
  • 使い方

白昼夢

私が小学生の頃、夏休み中の話です。

田舎の祖母の家へ遊びに行った時のことです。

昼間、探検と称して、少し遠くの方まで一人で散歩に出かけました。

田舎と言っても、田んぼや畑だけというわけではなく、

そこそこ民家が建ち並んでおり、川沿いの舗装されていない道を歩いていました。

川の反対側には、私の背より高い生垣で囲まれた家々が並んでいました。

道なりに歩いていると、ふと生垣の切れ間から、民家の庭が目に入りました。

その庭の隅には井戸があり、その脇に車椅子に乗ったお爺さん、

そして隣におばさんが立っており、こちらに背を向ける形でそれぞれ並んでいました。

「日向ぼっこでもしているのかな」

と思い、通り過ぎようとした時です。生垣で再び見えなくなる直前、

急におばさんが、お爺さんを車椅子からヒョイと持ち上げ、井戸に落としたのです。

エッ!?と思った私は、踏み出した足を一歩戻し、生垣から顔を戻して、もう一度井戸の方を見ました。

不思議なことに、井戸の周りには誰もいませんでした。車椅子もありません。

少しパニックになり、茫然としていましたが、隠れる場所もないし、

逃げるにしても早すぎると思い、庭に入って井戸に近付きました。

よく見ると、井戸には蓋が乗せてありました。

施錠されていたのか、重しがしてあったのか定かでありませんが、

蓋は取れず、中を見ることはできませんでした。

しばらく井戸のそばにいましたが、よくよく考えると、

人殺しの現場を見たかもしれない、犯人に見つかって殺されるかもしれないと、

急に怖くなり、逃げるようにして帰りました。

家に帰ってから冷静に考えると、あの時、井戸に落としたのなら、水の音なり、

何らかの音がするはずなのに、自分の足音以外、全く無音だったことに気がつきました。

やはり夢か何かだったのかと思いましたが、夕方、祖母に何となく昼間の家のこと聞いてみると、

「あそこには寝たきりのお爺さんがいるが、最近は見ていない。」

とのことでした。

子供ながらに、そのお爺さんはもう生きていない気がしました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
17500
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ