短編2
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淫夢魔

一人暮らしをしていた去年の夏の夜でした。

その夜はすごく暑かったのを覚えています。

突然、目が覚めて携帯の時計を見ると真夜中の2時を過ぎていました。

もう一度寝ようと思って、しばらくうとうとしていると、手足の先がじわじわと痺れていく感じがしました。

(あー、久しぶりに金縛り来た)

と思っていると、キーンと耳鳴りが始まり、体が完全に動かなくなりました。

いつもならそれだけで終わり、気づいたら朝になっているのですが、この時は違いました。

いきなり、体の上に何かがのしかかって来て、すごく息苦しくなったのです。

こんな事は初めてだったので、ものすごく怖くなって目を強く瞑りました。

耳鳴りもうるさいくらいに強くなり始めてきた時、何かがパンツの中に入って来た感じがしました。

ちなみに、この時はキャミソールとパンツ姿で寝ていました。

その入って来たのは多分、手のようなものだったような気がします。

そしてそれが、妙に温かかったのを覚えています。

本当にめちゃくちゃ怖くなって泣きそうになりました。

体が動かないので抵抗も出来ないし、声も出ないので、ただひたすらに目を瞑り続けていると、次は太もも辺りまでパンツを脱がされていく感じがしました。

一気に体中に鳥肌が立ちました。

すると、下半身に熱い何かを押し付けられたのです。

私は性行為の経験が無いので、それが何だったのかは分からなかったのですが、今思えば多分、男性のソレだったのかもしれません。

もう、怖すぎて心臓バクバクで、心の中で(早く消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ)と叫んでいました。

そうしたら急に息苦しく無くなり、やっと消えたと思ったら、突然若い男のような声で「こどもがほしい」と耳元で囁かれたのです。

その瞬間、体中をものすごい寒気が包みました。

怖くて怖くて、強く目を瞑りながら、また私は心の中で「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」と繰り返し必死で叫びました。

そして気が付くと、携帯の目覚ましアラームが鳴っていて、朝になっていました。

すぐに下半身を見てみましたが、体にタオルケットは掛かっているし、パンツもきちんと穿いているし、少しの違和感も感じませんでした。

その後、子供の頃に読んでいた「ぬ〜べ〜」という漫画に載っていた、淫夢魔(サキュバスとインキュバス)というのを思い出して、ああ、これがそれだったのかななんて思っていたりします。

友人にこの事を話たら、「単に、欲求不満だったからそんな夢見たんじゃない?」と言われ、恥ずかしくなりました。

でも触られた時の感触や、あの声や、体温をすごくリアルに覚えているんです。

そして今現在、私は妊娠どころか結婚の予定さえありません。

終わります。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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