短編1
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廃病院の巡視

私の働く病院。

数年前、建て替えをしたんですよ。

旧病院の脇に新病院を建てて、中身を移転して……と、そんな要領で。

ただ、中身を移転した後も、取り壊しまで半年くらい、旧病院は残存していた。

当然、電気や水道なんかは止まってるんですがね。

この旧病院、敷地を塀が囲ってあり、部外者はそう簡単に入れない立地なのですが、いちおう、夜間の巡視をしていた。

外注の警備員なんかでなく、事務方の当直が回る。

暗い中、かつては数々の怪談が語られた廃病院を1人で巡視する。

気味が悪いことこの上ない。

私の知る、ある事務方さんが回っていたときのこと。

エレベーターなんぞ止まっているから、階段で各病棟を回っていく。

と、ある病棟で灯りがついていた。

あれ、何だろう……と、訝しがって病棟を覗く。

ナースステーションには、白衣を着た看護師がいた。

夜中に何だろう、医療備品の移し忘れでもあったのか?遅くに大変だなあ。

とりあえず勤務員がいるのだから、この病棟は回らなくてもいいか……

なんて思いつつ。

彼は看護師にお疲れ様です、なんて声をかけ、巡視を続けた。

一通り回り終え、新病院の事務当直室に戻り、日誌を取り出す。

「異常なし」

そう書こうとして、ふと、彼は気づいた。

あの廃病院、すでに電気は止められていた。

病棟に灯りがついているはずない。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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