中編4
  • 表示切替
  • 使い方

実際にあった話です。

去年のこんな六月頃に聞いた話です。私はごく普通のOLで、まだ二年しか勤めていませんが当時その同僚のアユミから会社の帰り道の出来事に少し怖い出来事があった聞きました。今回はその話です。

その話と言うのは仕事が終わった帰り道に彼氏とN駅からの南出口の近くで待ち合わせをしていたそうです。しかし彼氏から少し遅くなるという連絡が入りアユミはしばらく待っていました。

仕事の疲れた足で少し待ちぼうけが辛かったのか、アユミは何処か喫茶店に入ろうかとも考えた先に一人の似顔絵屋が街路で佇んでいたのです。

まだ18時前といい少し明るかったのか、それとも似顔絵屋に興味があったのかもしれません。その似顔絵屋に引っ張られるように気付けばアユミはそこに座って似顔絵を描いてもらおうと出来上がりを楽しみにしていたそうです。

似顔絵を商売していた人は、20代後半から30代前半といった女性でした。

何処にでもいる普通の女性ですが、どこか元気がない表情をしていたそうです。

アユミが似顔絵を書いてもらおうと頼みに行った時はごく普通に接してくれたそうですが笑顔はなかったみたいです。多少、周囲の目も少し気にしていましたが椅子に座れるという事で足をほぐす事もありアユミは出来上がりの絵を今か今かと楽しみにしていたそうですが女性は口数は少なめで黙々と絵を描きはじめましたが、アユミは段々とある異変に気付いたそうです。

それはその絵かきの女性が全くアユミの顔を見ないという話でした。

普通は相手の顔をチラチラ見たり、話しかけて、相手の笑った顔も絵の参考にしたりするのですが、その女性は全くそれがなかったそうです。

もう一つあげれば、段々と描く早さが強くなり、女性は描く度に一人ニヤニヤとしていたのがアユミはそこに不気味な感じが身体全体に感じたそうです。何分か経った頃にようやく彼氏から電話が入り、「ここにいるよ」という主旨を伝えたそうです。

彼氏もその似顔絵屋の所にやって来て暫くアユミと雑談を軽くして「お前の次は俺も書いてもらおうかな」と明るく話しかけてアユミも思わず笑みが浮かびました。

しかし彼氏が来ても、その女性は紙から目を離しません。彼氏は耳打ちで「変な女だな…」「でしょ…」二人は会話もなくなり辺りが少し薄暗くなって何だかその重い空気に二人が感じました。

まだ人通りがある為かいつもの町並みですが、これが誰もいない所でこの女性と二人だけならとても耐えきれない。そんな独特な雰囲気がこの女性には感じられます。

どんな絵が出来上がっているか?まだ出来ないのか?と彼氏はその好奇心と苛立ちからそっとその女性の背後に回ったそうです…。

そしてゆっくりと絵を覗きこんだ瞬間

「!!…」

「帰ろうアユミ!早く!」

彼氏が声を大きく張り上げ顔は少し強張っていました。そしてどこか少し怯えたように声を震わせアユミの手を無理矢理引っ張りその場から離れようとしたのです。

「何?何?どうしたの?」訳が分からずアユミは彼氏と一緒に逃げました。

一瞬、アユミはその女性を振り返った時でも、まだその女性は絵を描き続けていた姿勢がアユミの目に止まり、前以上に不気味にニヤニヤと描き続けていたのがアユミにははっきりと分かりました。そして背筋に悪寒が走り顔が青ざめようやく彼氏の逃げる理由が分かったような気もしたそうです。だいぶ離れた喫茶店でようやく落ち着きを戻した彼氏にアユミは一番気になる事を聞いた。

「あの人、どんな顔を描いてたの?」

「………。」彼氏は口を閉ざしたまま俯いて答えません。

「お願い!気になるの。教えて!」アユミの必死のお願いにようやく彼氏は青ざめた顔を上げ重い口を開きました。

「……お前の死に顔だ…」

「…」

アユミが彼氏から聞いた話では似顔絵はホントにアユミ自身の顔でしたが頭から大量の血を流した死に顔を描いていたみたいです。

冗談にしてはリアル過ぎて客に渡すような絵ではありません。

しかしあの絵の影響かアユミはそれから一ヶ月後に交通事故に遭いました。

幸い命は無事でしたが頭から大量の血を流したそうです。もう少し遅ければ死を迎えてもおかしくはないところまでの重症でした。

彼氏はその病院でみたアユミの顔があの似顔絵そっくりだったそうです。

今は、アユミは退院して元気ですが彼氏はあの話はあれ以来話しません。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ