中編4
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ベタな怪談

町内会の行事で人手が欲しいと言うので昼間から手伝いに行ってたのですが、公民館の裏で空き瓶を片づけていると、会長の奥さんがこんな話を聞かせてくれました。

「そういえばね、このあいだ、、」

その日奥さんはゴルフのコンペに出かけた旦那(会長)さんの帰りを自宅で待っていたそうです。

コンペの後飲むなりすれば帰りは遅くなるかな、くらいに浅く奥さんは考えていた。

夕方、旦那さんは思っていたより早く帰ってきたのだが、何処ぞの柄の悪そうな若い衆を4、5人連れて上がり込んできた。

上機嫌の旦那さんをよそに、奥さんは突然の来客に泡くってしまった。

「参ったわよー!こっちは何の支度もしてなかったのよ~」

あれやこれやとしているうちに外はもう夕闇に包まれ、廊下の明かりを点けに行ったそうだ。

暗闇がぱっと一気に晴れると、トイレの前に座り込んでいる初老の男性が目に飛び込んできた。

「ビックリしたわー、いつからそこにいたのかしらって、、」

奥さんは慌てて、男性に水をお持ちしますねと声をかけた。

男性は力なく顔を上げると、青白い顔でだいじょうぶ構わんで下さいと手を振った。

その時一瞬、はて?と妙な違和感があったらしいのですが、構わす奥さんは急いで台所に向かった。

「酔ってる風には見えなかったのよね、、」

水をくみトイレに戻ると、項垂れた男性にコップを手渡した。

男性の手は異常に冷たかったそうです。

男性はゴクリと水を飲み、顔を上げにっこり笑うと、こう言った。

アナタも旦那さんも、優しいねぇ~。

ありがとう。

そう言うと、その男性は座った大勢のまま、スーーっと浮かび上がり、エレベーターのように天井に吸い込まれて消えたそうです。

奥さんは突然の怪事に思わす腰を抜かし叫んだ。

ギャーー!!!

声を聞きつけ飛んで来た奥さん曰わく「男共」に、なによあれ!と取り乱しながらも今の出来事を説明した。

若い衆は目を白黒させていたが、旦那さんがそうかそうかという感じで、ゆっり話し始めた。

「なんでも、、ゴルフ場で騒ぎがあったらしいのよね」

その日ゴルフ場の来客の中でドクターヘリで救急病院に運ばれた人がいたそうだ。

旦那さんは「恐らく、、」という言葉を多様していたそうだか、脳卒中という話で、ヘリが来た時にはもう息をしていなかったそうだ。

その人は、最初の1ホールを終えてすぐ気分が悪くなり、同じカートの仲間と別れて1人クラブハウスに戻った。

ロビーにある待合室でテレビを見ている姿は確認されていたが、まさかそのまま意識不明になるとは誰も思わなかった。

仲間が前半9ホールを終えてクラブハウスに戻り、その人に声をかけた時初めて事が発覚した。

酷いことにそれまでの約2時間半もの間、行き交う人達の前で急病人がほったらかしにされていたという事になるのだ。

ゴルフ場内ではドクターヘリが話題を呼び、その日は客同士そんな噂をそこら中でしていたそうだ。

旦那さんも確かにその初老の男性に覚えがあったそうで、少しの間その男性の横に座りテレビを見ていたというのだ。

なんだか気持ち悪くてコンペの終わりに男性がいたソファーに手を合わせ、その日はそのまま帰るつもりでいたそうだ。

奥さん的には、そこで《ついて来ちゃった》のかと十分納得出来たらしいのですが。

しかし、この若い衆は何処か沸いてきたんだ?っ話にもなるわけで。

何故か急に腹が立った(奥さん的にはグーで殴ってやりたかった)けれど、頑張ってぐっとこらえたという事でした。

「ほんっと単純っていうか、亡くなったわけでもないのに手を合わせちゃ駄目でしょ?ああもう!!馬鹿なのよ、馬鹿」

旦那さんはすっかり酔いが回り、「あの人助からなかったんだな~」と呟くと涙ぐんでしまい、男性のいたトイレの前に手を合わせたそうです。

それにつられて若い衆も手を合わせていたので、奥さんはこんな狭い廊下で大の大人が馬鹿馬鹿しいと思いつつ、同じように手を合わせたそうです。

すると。

カツンっ!

と足元から甲高い音が響いたそうです。

目を開けると、そこには空になったコップがフローリングの床にぽつんと置かれていたそうです。

ギャーー!!!!!

奥さん曰わく「男共」は全員、意味が分からず腰を抜かし泣き叫んでいたそうですが、、

その中でも一番旦那さんが取り乱していたのを奥さんは見逃さなかったそうです。

「ギャーギャー子供みたいに。コップ返しに来ただけでしょ?コップくらいで情けないわよね~」

奥さんは私にしかめ面をして見せると、ビール瓶を乱暴にカゴに詰めながらヤダヤダと、ため息をついていました。

怪談というか、半分旦那さんの愚痴だったような気もしましたが。

そんな話を、聞きました~。

おわり

怖い話投稿:ホラーテラー ハミーポッポーさん  

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