短編1
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視線

ガリッ、と、何かを噛んだ。

汗くさくて、酸っぱく、鉄のような味が、口内に広がる。茶を飲んでいた時である。

私は思わず湯飲みの中を覗いた。

最初は虫かと思った。が、違う。茶の水面を、こちらに背を向けて漂う、小さな人の上半身、腸のようなものが垂れて――

そこまで認めると、湯飲みごと思いきり窓から投げ捨て、ショックのあまり近所の公園の周囲を無意味に何周も走り回った。

それからである。妙に視線を感じるようになった。それも、なぜか二つの視線とわかるのである。

ある日の朝、腕に痛みを感じ、見ると、腕が小さく食いちぎられていた。1センチほどの円として痕に残った。

その痕は、並んで二つあった。

そういえば、あの日、茶の中を漂う人のようなものは、今思うとその体格から、子供の体のようにも思えた。

するとあの二つの視線、二つの痕は――?

いや、私は悪くない。人の茶の中に勝手に紛れ込む方が悪いのだ。

視線は日を追って、ねめつくような、執拗な、強烈な、憎しみ、恨み、怒りを強め、纏いながら私に迫ってくる。腕のえぐれは毎日増える。

私は悪くない……悪くない……悪くない……

怖い話投稿:ホラーテラー 仮MELONさん  

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