中編3
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私の小林君

小林君は私の憧れだ。

高校生にしては、少しカゲのある彼は、小さい時にお母さんを亡くしているらしい。

そして、去年には一つ下の彼女も亡くしている。

同じ学校だけど、一学年下の娘だから噂でしか知らないけれど、病気だったそうだ。

小林君は背も高くて、カッコいいのでファンは多いけれど、少し話しかけづらい雰囲気を醸し出している。でも、私に言わせるとそこがまたイイ。

ファンが多いので妬まれているのか、妙な噂もある。気に入った女の子を、必ずお母さんとの思い出の公園に連れていくらしく、死んだお母さんに会わせてるという噂だ。バカみたいというのが私の正直な感想。

三年生になって、小林君と同じクラスになることができた。私は高校生になって一番嬉しかった。

それから、2ヶ月くらいしてみんなでカラオケに行くことになった。

私は歌は下手くそだし、人前で歌うのは恥ずかしくて嫌だけど、小林君も行くので行くことにした。

小林君は私の知らない歌を歌った。周りの男子が「古っ!!」って言ってたので、古い歌なんだろう。

歌はあまり上手じゃなかったけど、とても優しい歌声で、つい見惚れてしまい男子にからかわれた…。

消え入りたい気分だった。

それから、私と小林君は少しずつ話す機会も増えてきて、冗談も言い合える仲になった。

ある日、小林君に「帰りにちょっと付き合って欲しいとこがあるんだけど、いいかな?」と言われて、その日は1日中、授業も上の空だった。

そして放課後、二人で小林君の自宅近くの公園に行った。キレイに枝がない大木の前のベンチに、二人で並んで腰掛けるだけで、私の心臓は破裂するんじゃないかっていうくらい高鳴った。

「実は俺、小学一年の時にお母さんが自殺してるんだ…。」

亡くしてたのは知ってたけれど、まさか自殺だったとは…。

でも、小林君はなんで私にこんな事を打ち明けるのだろう?ひょっとしたら、噂は本当で、私のことを気に入ってくれたのだろうか?小林君のお母さんの話を聞きながら、そればかりを考えてた。

「いきなり、呼び出してこんな話してごめんな。何かお前には知ってて欲しくてさぁ…。」

照れ笑いする小林君をますます好きになった。

それから、私と小林君はたまに二人で公園で話をするようになった。

私がたまにはマックでも行かない?と言うと露骨に嫌な顔をした。静かな場所が好きらしい。

そして、公園ではいつもお母さんの話をした。私が小林君の事を聞いても、その質問には答えずにお母さんの話を続けた。

小林君を知らない友達にその事を話すと、マザコンとか怖いとか言うけれど、小林君はただ、母親思いで優しいだけなのに…と、腹が立った。

やっぱり、小林君の事を理解してるのは私だけだ。

私は小林君がお母さんの話ばかりするのは、あまり好きじゃないけれど、全ての思い出を語り終えたなら、私に振り向いてくれる気がしていた。

そして五回目の公園デート。小林君が不意に「これからまた、ずっと一緒にいようね」と子供のような笑顔で言ってくれた。

恥ずかしかったのか、視線は私の後ろを見てたけど、私は嬉しくて嬉しくて泣いてしまった。

次の日から、小林君は私にとても甘えてくれた。一緒にいる時はずっと手をつないでてくれるし、公園以外も一緒に行ってくれる。

「どうして公園以外でも、デートしてくれる気になったの?」

いたずらっぽく聞いてみる。

「もういいんだ。お母さんも君の事が気に入ったみたいだし。」

小林君はやっと、お母さんじゃなくて私を見てくれたと思った。

毎日が楽しいけど、小林君に告白されてから、ずっと両肩が重い。

怖い話投稿:ホラーテラー 特命さん  

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